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迫り来る爆発、「色」で予測可能に

 国立天文台岡山天体物理観測所、鹿児島大学、東京工業大学、京都大学から成る研究グループは岡山天体物理観測所の50cmMITSuME(三つ目)望遠鏡を用いて代表的な矮新星の一つである SU UMa (おおぐま座SU星) を観測し、色変化を用いた爆発の予測方法を発見したと発表しました。

矮新星の想像図

図1. 矮新星の想像図。 矮新星とは、変光星の一種です。白色矮星と恒星のペアからなる連星系で、恒星から白色矮星へ降着円盤を通して物質が流れ込み、降着円盤が不安定になって急激に明るくなるために明るさが変わると考えられています。矮新星では明るさだけでなく、色も変化しますが、なぜこのような変化が起こるのか、その原因はよくわかっていません。研究グループは 、矮新星における明るさと色の関係を調べることで降着円盤の物理を探る研究を行っています。(クレジット:国立天文台)

 研究グループは、岡山天体物理観測所にある50cmMITSuME(三つ目)望遠鏡などを用いて2011年12月から2012年3月までの間、代表的な矮新星の一つであるSU UMaを約60夜にわたって、g’バンド(波長480ナノメートルを中心とする青から緑の光)、Rcバンド(波長650ナノメートルを中心とする赤い光)、Icバンド(波長800ナノメートルを中心とする近赤外線) で多色同時測光観測しました。この観測でのデータ点は、合計6万点以上にも及び、矮新星の観測としては前例のない大規模な測光観測です。

今回の観測で得られた光度曲線

図2. 明るさの時間変化。 横軸は時間(1目盛りが2日)、縦軸はRcによる等級(明るさ)を表し、上にいくほど明るい。観測期間中に5回の爆発を捉えた。また、静穏時の等級が明るいとき(図中のE,I,K の時期)と暗いとき(図中のA,C,G の時期)があることを確認した。また、明るい静穏期は継続期間が短く、5日から1週間程度であることが分かる。(クレジット:国立天文台)

 その結果、この矮新星は、爆発の数日前に(g’-Rc)の等級差(色)が赤くなることを発見しました。つまり、(g’-Rc)の色によって爆発が近づいていることを予測することができます。他にも観測結果から、静穏期(爆発していない時)の等級にも明るい時期と暗い時期の二種類があることや、明るい静穏期は期間が短く(1週間前後)、(g’-Rc)で赤いということもわかりました。

 爆発が近づくと(g’-Rc)が赤くなることは、いくつかの解釈が可能です。
  (1) 爆発直前に降着円盤内縁がガスで満たされ、白色矮星を隠すことでg’等級のみが
     暗くなる可能性
  (2) 爆発の直前に6000K程度の成分が降着円盤内で卓越した可能性
などがあります。

色変化の2色図

図3. 日ごとに平均した色を2色図上にプロットしたもの。 数値が大きくなるほど赤いことを示す。図中の□は爆発時、▲は明るい静穏時(E,I,K)、○は暗い静穏時(A,C,G)、●は暗い静穏時だが爆発3日前から爆発前日までを示す。図中でblue、red と書かれている部分の間にギャップがあることも確認できる。明るい静穏時と爆発直前のデータ点はギャップの下側((g’-Rc)で赤)に集中していることが分かる。これは明るい静穏時、暗い静穏時いずれの場合も(g’-Rc)が赤くなると爆発が近いことを示唆する。(クレジット:国立天文台)

 ただ、いずれの解釈が正しいかは不明で、今後の観測結果が待たれます。たとえば、(1)の解釈は爆発前の色や等級を説明できるものの理論的背景がほとんどなく現状では推測に過ぎません。(2)の解釈は理論的な予想はあるもののRcやIcバンドでの等級の変化を説明することができません。矮新星は降着円盤の物理を理解する上で最も適した観測対象です。研究チームでは今後もさらに多くの矮新星の観測を行い、降着円盤の様々な性質を解明したいと考えています。 

この研究論文は、日本天文学会欧文研究報告(PASJ)Vol.65 No.4 2013年8月25日号に掲載される予定です。

(2013年7月掲載)

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