はじめに
このビジターズガイドは、全国の研究者が国立天文台岡山天体物理観測所に来訪し、その施設・機器を使用して観測・研究を行う際に役立つように作られたものです。
来訪研究者(以下ビジターと略す)にとって簡易マニュアルとして利用できるように設備や機器の概説を載せています。観測計画の立案および滞在に役立つよう 全体的な構成を理解していただくことを意図しています。特に初めて来訪される方は必ず一読されるようお願い致します。
概要
岡山天体物理観測所は東京大学東京天文台の観測所として1960年に開所され、1962年の本観測開始以来一貫して全国の研究者に利用されてきました。 188cm反射望遠鏡、91cm反射望遠鏡、65cmクーデ型太陽望遠鏡の3つの主要望遠鏡は、太陽・惑星・恒星・星団・銀河などの天体物理観測に有効利用され、幾多の成果を生み出してきました。そして、1988年7月の改組を機に、岡山天体物理観測所は国立天文台の観測所として正式な共同利用が実施されはじめました。
岡山天体物理観測所には現在10数名の職員が勤務し、天文学研究とその補助、望遠鏡や観測装置の保守・開発、ビジ ターの受け入れ業務などを行っています。観測プログラムは、国立天文台光赤外専門委員会の下のプログラム小委員会により取り扱われ、年2期制(1~6月、 7~12月)で公募・編成されます。
ビジターは割り付けられたプログラムにしたがって来訪し観測を行いますが、共同利用のための旅費が支払われています。6-7月と9月の一部は整備期間として望遠鏡・機器の整備や鏡の蒸着作業に割り当てられており、年間で延べ約43週間が共同利用に供されています。
共同利用
岡山天体物理観測所は大学共同利用機関である国立天文台の施設として、全国の研究者によって共同利用されています。現在共同利用に供されている望遠鏡は、188cm反射望遠鏡(カセグレン焦点、クーデ焦点)であり、この望遠鏡に装着して使用する観測装置が用意されています。
年間の日程では、6-7月(梅雨期)及び9月(秋雨期)の一部は共同利用からはずし、整備期間としています。整備期間は鏡の真空蒸着、光軸調整、清拭、注油等の作業を行い、各種の改修やテストを行います。
また、ドームや望遠鏡の大規模な工事を実施することもあります。望遠鏡・観測装置のほかに岡山天体物理観測所に常設されている主な設備としては、真空蒸着装置、工作機械、計算機などがあり、機器の開発や整備、データの保存・解析などに用いられています。
観測プログラム
観測プログラムの編成は、光赤外専門委員会の下部委員会である「プログラム小委員会」で扱われ、スクリーニング制によりプログラムの編成を行います。観測プログラム編成の手順は次の通りです(後ろのカッコは手続きの流れとその期の開始日からの月数)。
- 公募の要項と申込書を送付する(所長→各研究機関の代表者:4ヶ月前)
- 観測希望者から応募を受ける(→共同利用係、締め切り:3ヶ月前)
- レフェリーへ評価を依頼する
- 評価に基づいて採否の判定を行う(プログラム小委)
- 日程を確定し、観測日程表を送付する(→観測代表者:1ヶ月前)
公募締め切りは通常前期分は前年の10月初め、後期分は4月中頃となっています。
プログラム小委員会では、レフェリー評価を参照しながら、学位論文・データ処理の状況等も含めて総合的に評価し、さらに季節分布及び暗夜・明夜の区別を考慮して、個々の課題について採否を決めます。
また、共同利用期間中に「エンジニアリングタイム」を設け、観測所主導で望遠鏡の調整や観測装置の立ち上げ・テストを行っています。観測申し込みのない期日は「所長預かり」として編成し、改めて申し込みを受け入れたり、テストなどに有効利用をしています。
このような運用の基本方針については、光赤外専門委員会及びプログラム小委によって審議され、ユーザーズミーティングなどの機会に一般ユーザーを含めた討論を経て、決定されています。