開発の目的

可視高分散分光装置HIDESは、岡山観測所で最もよく利用されている共同利用装置で、系外惑星探しや恒星の研究の分野で活躍しています。1999年のファーストライト以降も常に改良が繰り返され、現在では、ヨードセル装置の導入によって数m/sの視線速度測定精度が達成されたり、モザイクCCD化により400nm弱にわたる波長域のスペクトルが一度に取得可能となっています。しかしながら、

  • スリットの蹴られなどの影響で、スループットが実質的に2%程度以下しかない
  • 今後はより高い視線速度測定精度が望まれる

など、科学的価値を維持・向上させていくためには、更なる改良が必要とされていました。また、

  • マルチモード光ファイバー導入方式の高分散分光器は、その柔軟性や安定性から今後も重要な観測装置の一つであると考えられ、我々にも開発の経験が必要なこと
  • 京都大学3.8m望遠鏡の建設を控え、岡山観測所の機器開発設備の充実を図りたいこと

などが背景にありました。そこで、我々は、

  • 約1等級のスループットの改善
  • スリットイルミネーションの安定化による、より高い視線速度測定精度の達成

を目指して、188cm望遠鏡とHIDESとを光ファイバーで結ぶ計画を2007年度より本格的に始めました。

我々が最初に開発した光ファイバー経路は、高効率モード(high-efficiency mode; HE-mode)です。このモードでは、常に視野2.7秒角以内の天体光を分光器内に導入しつつ、分光器の入口にイメージスライサーを置くことで波長分解能R~50,000を確保しています。開発にあたっては、特に系外惑星探しなどヨードセル観測(500nm〜600nm)の効率を改善することを主目的とし、装置の最適化を図りました。このモードでは、例えば、岡山観測所で系外惑星を探すことができる恒星の数をこれまでの4倍に増やすことができます。HEモードは、2009年末のファーストライト、2010年の試験観測を経て、2011年から共同利用観測に供しています。

一方、、2010年より我々は、より高波長分解能観測(R~100,000)での観測効率を改善するために、高波長分解能モード(high-resolution mode; HR-modeの開発に取り組んでいます。このモードでは、分光器内に従来のスリット観測での約4倍にあたる、1.6秒角程度の視野の光を分光器内導入できるので、飛躍的に効率が上がる予定です。2016A期からはリスクシェア型PI装置として、共同利用観測に公開することになりました。

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