プロポーザル作成にあたって

プロポーザルを作成されるにあたっては、基本的にはHIDESの観測計画マニュアルを参考にしながら観測計画を立ててください。ただし、HIDES Fiber-Feedを使用する場合には、特に以下のことに注意してください。また、HEモードの性能等については装置開発論文を、HRモードについてはここの資料を参照してください。

  • 波長分解能
      比波長分解能はHEモードはR〜52,000、HRモードはR〜110,000でそれぞれ固定です。
  • 観測可能波長域
      赤クロスディスパーザを使用した場合、HEモードでは440nm未満では、HRモードでは430nm未満では隣のオーダーが接近しているため、フラット補正や散乱光補正の方法に工夫が必要となります。したがって、通常はこれらの波長が実質的な短波長側の限界です(さらに、約410nmより短波長側では、隣のオーダーが一部重なります)。青クロスディスパーザを使用した場合には、オーダーの重なりによる観測波長域の制限はありません(詳細は下記参照)。
  • SNの限界(とフラット補正)
      HIDESファイバーフィードによる観測では、スペクトルのS/Nを制限する要因として、光子ノイズ以外に、1)ファイバーのモーダルノイズ、および、2)CCDのフリンジ、に気をつける必要があります。
       前者は、光ファイバーを使用することによって起こる問題です。光ファイバーへの入射光の照射パターンが異なると光ファイバー内で異なる干渉パターンが起こり、それがスペクトルにも現れるために、通常行われるような人工フラットによるフラット補正が完全ではなくなります(同じ星のスペクトルでも、取得されたときの望遠鏡の姿勢、すなわち光ファイバーの曲がり具合によってパターンは異なります)。HIDESファイバーフィードでの観測でモーダルノイズが問題となるのは波長700nm未満で高S/Nスペクトルを取得したいような場合(注:モーダルノイズ自体は波長が長いほど強いが、HIDESの場合長波長側では2)の問題が効いてくる)ですが、スリットを用いた人工フラットを使用すれば(星のスペクトルにのみモーダルノイズがのりますので)、S/Nが1,000程度であれば問題ないようです。それ以上のSNが必要な場合にはご相談ください(この問題をハードウェア的に緩和させる機能を開発中です)。
       一方、後者はCCD固有の問題で、HIDESの場合700nmより長い波長域で顕著に現れてきます。特に800nm台の波長域では、フリンジパターンの時間変化の程度やフラットの取り方(ファイバーにすべきかスリットにすべきか)をよく調べて観測を行う必要が出てきます。現時点では、800nm台後半の波長域で到達できるS/Nは高々200です。
  • 観測効率と必要な観測時間の見積り
      必要な露出時間はHIDES-F Exposure Time Calculator (HIDES-F ETC)を利用して見積もることができます。観測に必要な総露出時間を求める際には、Atomspheric ConditionとしてTypicalを選択して時間を見積もってください。また、観測時間を申請する場合には、天気の影響(全く観測できない時間)や観測のオーバーヘッド(参照光源を撮る時間や望遠鏡を向ける時間)による時間のロスを上の時間に加えてください。細かい見積りが難しい場合や特殊な観測でない場合には、上で求まった値の2倍を必要な観測時間としてください。
       限界等級に近く、観測条件の良い場合にしか観測しない(観測できない)ような天体の場合は、Excellentを選択して、feasibilityを確かめてください。
       参考までに、下に、HEモードでの観測と従来のスリットでの観測(スリットを大きく開けた場合)について、実際に得られた最大スループットの値を、波長の関数としてそれぞれ描いた図を示します。これまでのHEモードでの観測では、平均的に最大値の50%程度のスループットが得られています(ただし、これは明るい恒星を天気が許す限り撮ったような場合で、多少conservativeな見積もりだと考えられます。詳しくは、装置開発論文をご覧ください)。
       HRモードについては、まだ観測例が少なくスループットの評価が十分ではありませんが、これまでの最高値として550nm付近で4.4%の値が得られています。HIDES-F ETCではこの値を参考にしています。
  • スリット観測(緑線)とHEモード(赤線)のスループット。黒線はその比。なお、440nm未満の波長は青クロスディスパーザを使用している

  • その他の注意点
      スリット観測の時よりも、空間方向に像が広がっていますので、bad columnにはより一層の注意が必要です。
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