2-2. 波長感度較正を行う


 では次に波長感度較正を行おう。 これが済めば一応一次処理は終了である。 ある種の観測においてはここまでの段階で天文学に即突入できるであろう。

  1.  波長感度較正を行う前に、2-1.で作ったスカイ差し引き済みのフレーム(*.bg.imh)を目的天体と標準星に分けなければならない。 そのためには、各フレームのタイトルを眺めるとよい。

    imhead *.bg.imh ↓


    こうすれば各フレームのタイトル(オブジェクト名)がずらずらと表示されるので、それを眺めてどのフレームが目的天体でどれが標準星なのかを確かめる。 覚えていられない人は、メモを取っておこう。 メモるのが面倒な人は、次のようにしてプリンターに打ち出しておいたら良い。

    imhead *.bg.imh | lpr ↓


    もちろん、UNIXのパワーユーザーを自負する方はファイルにリダイレクトしておき、後々awkなどで仕分けをするのもよい。 さて、自分のメモかプリンター出力を見ながらどのフレームにどの標準星を使うかを決める。 このときには観測野帳も参考になろう。 決めたら目的天体のフレームリストと、対応する標準星のフレームリストを自分の使いやすいエディタを用いて作る。 これは一行に一つづつフレーム名を書き連ねたテキストファイルで、IRAFを用いた処理ではよく使う。
     次に目的天体リストobjectlistから出力リストoutputlistを作っておく。 エディタでobjectlistを開き編集してもよいが、ここはUNIXのsedを使うのがスマートである。 例えば、波長感度較正済みのフレーム名を*.fc.imhという風にしたければ、

    !sed 's/.bg/.fc/g' objectlist > outputlist ↓


    とすればよい。

  2.  リストができたらsens¥_calibコマンドで波長感度較正を行う。

    sens_calib @objectlist @standardlist outputlist sensimg

    objectlistは1.で作った目的天体のリスト、standardlistは標準星のリスト、outputlistは出力リスト、sensimgは出力される感度特性関数のファイル名で適当に与えておく。

    図14. 標準星の写っている範囲を選ぶ。
    図15. 標準星フレームのカウントとフラックスの対応をつける(IRAFのstandardコマンド)。 スペクトル中に多数表示されている小さな長方形の横幅は、標準星データのバンド幅を示す。 この例ではフレームの右端(5200A付近)に標準星のデータがないことに気付くが、これが次の処理に影響を及ぼす(図16参照)。

    sens_calibが走るとまず、標準星のスペクトルを空間方向に足し合わせて一次元化する。 おなじみのTektro画面に標準星フレームのスリット長方向に沿って切った断面が表示される(図14)。

    >>>>> Select integral region. >>>>>
      shift-x: expand x coordinate
      shift-c: coordinate of cursor position
      shift-m: move graphics to center cursor position
      return: exit to next step


    カーソルを使って標準星の写っている領域を読みとる。 次に

    >>>>> input start column to be cut
    >>>>> input end column to be cut


    と言ってくるので標準星の写っている領域の最初と最後のcolumnをそれぞれ答える。 次にIRAFのstandardというコマンドで標準星フレームのカウントとフラックスの対応付けを行う(図15)。 それが終わると、sensfuncコマンドが走る。 これにより、波長感度特性を多項式でフィッティングする。 Tektro画面にフィッティングの様子がグラフで示されるので、対話的にフィッティングを調整する(図16)。 あまり極端にフィッティング関数が上下するようなときは、関数の次数を:order n(nには関数の次数+1が入る)コマンドで調整する。 フレームの端などでフィッティング関数が上下に踊るときは、常識的に判断してフィッティング関数が波長に対してスムーズになるよう人為的にフィッティングデータを増やす(図16、17参照)。 カーソルを適当な位置に持っていって、を押すとそこに人工データが追加される。 以上のような操作をした後、<f>キーで再フィッティングする。 グラフが重なって見にくいときは<r>でグラフを書き直す。 こうしてフィッティング関数の形を調整したら<q>でsensfuncを抜ける。 後は待っていれば自動的に目的天体の波長感度較正をやってくれる。

    図16. 波長感度特性の多項式フィッティング(IRAFのsensfuncコマンド)。 図15で指摘したようにフレームの右端(5200A付近)の標準星フラックスデータがないので、そこでフィッティングがおかしくなっている。 このような極端な感度の低下は考えにくいので図17のように人為的に補正する。
    図17. 図16にキーで人為的にデータを追加して再フィッティングした結果。

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