偏光撮像分光装置 OOPS は、可視光で最大となる星間吸収による偏光を検出するための 装置であり、また、岡山観測所91cm望遠鏡の専用装置として計画されているので、 以下の諸点を設計指針とした。
偏光撮像分光装置 OOPS と改修された91cm 望遠鏡( 湯谷他 1995 ) によって、統合的観測システムとして効率の良い高精度な観測手段を手にする ことができた。 1994年のシューメーカ・レビー第9彗星の観測では、木星に衝突した彗星核の 黒色スポットで偏光を観測した( Suzuki et al.1995 )。 所期の目的である銀河偏光撮像もいくつかの銀河についてデータが取れ始めている。 統合観測システムで長期の観測プロジェクトを遂行することが可能となった。
OOPS は、すばる望遠鏡の観測装置 FOCAS ( Sasaki et al. 1994 ) のプロトタイプとして複数の観測モードの運用とそのデータ解析システムの検討にも 用いられよう。 OOPSにマルチスリットを装着しての多天体分光の試験観測も行われようとしている。 すばる望遠鏡では、望遠鏡、観測装置、解析計算機システムが協調動作をして、 統合的に観測を遂行することが予定されている ( Sasaki et al. 1994 )。 OOPS は、これらのすばる望遠鏡での統合観測システムのプロトタイプとして運用 経験を積むことも期待されている。
検出器としては、日本TI社の CCD TC-215 を用いている。ピクセル サイズは 12.0 um であるので、CCD 上でのスケールは 0.56"/pixel となる。CCD TC-215 の画素数は 1024(H) x 1024(V)、撮像領域と しての
コリメータレンズとカメラレンズの間の平行ビーム部には、
コリメータレンズによる主鏡像位置近傍に
偏光素子部
を置き、その前後に、
フィルター・ターレット
(広帯域フィルターと分散素子)、シャッターを配置している。
偏光素子としては
ロションプリズム(分離角 7度)を採用した。
ロションプリズムは、常光線が直進し、異常光線が偏角をもって
射出される。直進常光線は色分散もなく、かつ、偏光素子部を光路
から外して直接像観測や分光観測をする際にも同一の場所に像が
できて便利と考えられる。
(ロションプリズムの仕様参照)
ロションでの分離角 7度は、常光線像と異常光線像が、採用された
カメラレンズでCCD素子上に2分割して結像するためには、望遠鏡
焦点部に視野を決める
マスク
が必要で、21mm x 16.2mm (6.0' x 4.6') のマスクを用いている。
これは、CCD 上で 7.8mm x 6.0mm となる。
偏光アナライザーとしてのロションプリズムと半波長板との組み合
わせで、直線偏光の観測には半波長板を 22.5 度ずつ回転して用い
る。ロションプリズムは、方解石によるものを製作した。ロション
プリズムから偏角をもって射出される異常光は、その偏角に波長
依存性があり観測に影響する。方解石製分離角7度のロション
プリズムでの異常光偏角の
波長依存性
は、かなり大きく、波長帯域 100nm の両端波長での偏角の差は、
半波長板
については、MgF2 + SiO2 の2結晶2枚構成3組の Pancharatnam
型スーパーアクロマティック半波長板(有効径φ19mm)を用いてい
る。(半波長板の仕様参照)
偏光素子部の後に配置は、第2フィルター・タレットとして分光
素子を装着して、分光観測及び偏光分光観測が可能となっている。
そのため、偏光素子部と第2フィルター・タレットを可能な限り
接近して配置した。
(
分光素子としては直光学系を生かすために、
グリズム
を採用した。グリズムの設計は、グレーティング刻線数、
プリズム頂角、ブレーズ角度を最適化して行った。硝材は BK7 で、
刻線本数は400本/mm、ブレーズ波長( 5500 A)が直透過となるように
頂角 24 42' である。OOPS 光学系では 5500 A で分散 488 A/mm、
5.9 A/pixel である(参照:
グリズム分散図 )。
シャッターは撮像時の視野内での露光時間の一様性を確保し、視野
全面にわたる測光精度の均質性の上から重要である。往々にして
収束光中にシャッターを配置しているが露光時間の一様性を確保
するにはシャッターに特別な工夫が必要である。コリメータレンズ
とカメラレンズの間の平行ビーム部にシャッターを配置したので、
OOPSでは視野内での露光時間の一様性はほぼ完全に保証されている。
400 nm で -0.672 deg (CCD上で 0.586mm に相当)、
である。偏光撮像観測時に、異常光をも用いる場合には広帯域
フィルターでは像が変形する。
500 nm で -0.326 deg (同 0.284mm )、
600 nm で -0.143 deg (同 0.125mm )、
700 nm で -0.108 deg (同 0.094mm )、
800 nm で -0.057 deg (同 0.050mm )
機構部筺体は、ガイド部、OOPS 本体部、CCD デュワー部、及び 将来のインスツルローテータへの拡張に備えたガイド部と本体部と を結ぶジョイント部の4部に分かれる構造とした。
FEM による解析では、天頂と天頂距離 45 度での撓みの差は 10 um となった。これは、0.46" に相当しており、天頂距離45度相当の 日周運動は3 時間以上かかるので、充分な剛性を持っている。
機構部筺体各部のうちガイド部には、オフセットガイド用の II付き CCD カメラ(浜松ホトニクス ICCD C3500-01)、カメラ駆動用の XY 駆動機構とその制御部が含まれる。ガイド部では、ピックアップ 平面鏡(50 x 50 x t10 mm)で直角に曲げられたガイド視野光が II CCD カメラに結像する。II CCDカメラは、ディジタイズボード で画素数 512 x 512 で数値化される。画素あたり 0.21 arcsec であるので、視野としては 107"(1.8') x 107"(1.8') である。 オフセットガイドカメラの光軸方向駆動(Y軸)では、光軸を原点 としてエンコーダーの値を読みとっているので、 y < 39 mm では、 FOV 6' のビームが蹴られる。
OOPS 本体部に配置されているユニットは、ダイアフラム・ ターレット、コリメータレンズ、第1フィルター・ターレット、 シャッター、偏光部(回転半波長板とロションプリズム)、 第2フィルター(グリズム)ターレット、カメラレンズである。 これらのうち駆動機構の搭載されている ターレットユニットと偏光ユニットとは、調整、保守を考慮して 個々独立したユニットとして制作した。ターレット回転軸はガタの 少ないクロスローラリングを用いた。位置決め精度をあげるために 高分解能なアブソリュートエンコーダーを取り付けた (参照: OOPS ユニット一覧 )。 これらの駆動ユニットには単体での動作を可能とするように、 CPU 搭載の制御ボードを同架した。外部とは RS-232C による 通信でモーター駆動命令やエンコーダデータ送信指令を受信し、 ステータスデータを送信することによって、ユニット単体での 独立した制御を行っている。 位置決め精度等の検定は、ユニット単体で行える(次章参照)。 ダイアフラム/フィルター/グリズム・ターレットユニット には、それぞれ6枚のダイアフラム/フィルター/グリズムが 装着可能であり、モーター、アブソリュートエンコーダ(16ビット) と CPU 搭載の制御ボード が同架され、RS-232Cによって遠隔制御 を行うことが可能である。 偏光ユニット では回転半波長板が駆動制御される。ロションプリズムは固定で ある。
CCD検出器用デュワー は、91cm 望遠鏡のフォークのふところ 710mm をクリアーする ために、CCD マウント用フラスコがデュワー本体から張り出す ようにした。 液体窒素保持時間を12時間以上とするためにデュワーは丈が 長くなっている。デュワー内コールドプレートから冷却アームが フラスコ内に延び、CCDマウント底面とは銅箔数枚で結合されて いる。銅箔枚数を調整することによってCCDマウント最低温度が 調整可能であるが、現在は -160 ℃ になっている。 CCD マウントには温度センサー(シリコンダイオード)と ヒーター(抵抗)が取り付けられており、 温度コントローラ (Lakeshore Model 320-01: RS-232C 付き) で ±0.1-0.2 ℃ の温度安定性で設定される。 現在は -120 ℃ の設定に対して -122 ℃ の表示温度で 用いている。現在の設定温度 -120 ℃ での、季節による様々な 環境下での実用的な液体窒素保持時間は 14時間以上である。 デュワー内には真空度をあげるために吸着材モラキュラーシーブが 設置され、その活性を保障するためにデュワーのベーキング処理を 行った。CCD素子を組み込んだ後に真空引きをし、デュワー全体を オーブンに入れて約 65 ℃ で 3日間ベークした。ベークしながらの 真空引きは不可能であったので、ベーク直後に再度真空引きを行っ た。デュワーの平均到達真空度は、1-2 時間の真空引きで 約 7・10-6 Torr ( 9・10-4 Pa ) である。
CCD 雑音として悪影響を与える放射線イベントを極力少なくする ためにはCCD 回りやデュワー内の部品の材質にも注意を払う必要 がある ( Thorne et al. 1986 )。 そこで、CCD マウントには、岡山観測所に導入された RCA CCD カメラ( 家他 1988 ) で実績のある高純度な無酸素銅を用いた。また、デュワー窓材 には溶融石英を用いた。 デュワーとCCDパッケージとの電気的接触によるノイズを避ける ためと熱接触を図るために、デュワーとCCDパッケージとの間に 絶縁放熱シート((株)デンカ)を用いている。 熱接触のためのグリース等は用いていない。 OOPS全体写真 でわかるように、OOPS本体機構部を中心に液体窒素デュワーと 電気系ボックスが対称についている。電気系ボックスには、 デュワー温度コントローラが同架されており、その上には オフセットガイド用 IICCD コントローラが配置されている。
CCD カメラ制御系は、関口・三上による Messia II を用いている。
オリジナルの Messia II では、ADCボードと他の制御ボード、メモリ
ボードが同一の VME クレート内で動作しているが、メモリー等の組み
込まれている VMEクレートは空調のきいた制御室に置き、ADCボード
は CCDカメラとそのアンプ系の近くに配置するように変更を加えた。
ADCボードとメモリーインタフェース間はディジタル信号を延長する
ようにホトカプラー回路ボードを増設した。
制御用ワークステーションとしては、Messia II の S-Bus ボードに
対応していて、S-Bus入出力が比較的高速だった Sun ワークステー
ション互換のソルボーン社 S-4000 ( 25MIPS, メモリー 40MB,
ディスク 2.5GB ) を採用した。データは DAT (4mmテープ装置)に
保存される。
OOPS機構部各ユニットで駆動制御されるものは、
OOPS機構部各ユニットの制御は、 清水(1992) が中心となって設計・製作したマイクロプロセッサー搭載ボード *1 を用いて行っている。
このマイクロプロセッサー搭載ボードには、それぞれZ80 上位互換の 日立 HD64180(8MHz)が搭載され、32KB の ROM と 32KB の RAM、 ユニット識別用の DIP SW が用意されている。このボードは必要と する I/O の違いによって3種類用意した。マスター CPU ボードは、 RS-232C 14チャンネルを有し、うち 1チャンネルは制御用 ワークステーションとの通信用で、 13チャンネルはユニット 搭載スレーブ CPU ボードとの通信用である。スレーブ CPU ボード には、RS-232C 2 チャンネルを持つボードと、RS-232C 1 チャンネル と 24 ビットのパラレル入出力ポートを持つものを用いている。 前者は、温度コントローラとII CCD カメラコントローラとの通信 用で、後者は機構部各ユニット制御用である。ユニット制御 (モータ駆動、エンコーダ読み取り、リミッター信号取得)は パラレル入出力ポートを用いるが、モータ駆動にはDCモータ・ ドライバーIC (12V) が外付けボードとして必要である。 これらのCPUボードでは、PROM 化プログラムで各ユニットを制御 する。この PROM を書き直すこととボード上の DIP SW による ユニット識別コードによって各ユニットの制御への汎用性を もたせた。 制御用ワークステーションからの制御コマンドはRS-232C ( 4800bps, 8bits, no parity, 1 stop bit ) を通してマスターCPUに 送信され、マスターCPUで制御コードに記述されているユニット 識別子に従って制御コードを各ユニットスレーブ CPU に振り 分けている。各ユニットからのエンコーダデータやステータスデータ はマスター CPU が収集しワークステーションに送られる。
これらのCPUボードで処理される制御コマンドは、
制御ワークステーションからマスターCPU ボードを経由して II CCD カメラと CCDデュワー温度コントローラの制御が可能である。 II CCD カメラ制御部は筐体外付けであり、RS-232C ( 4800bps, 8bits, no parity, 1 stop bit ) による遠隔制御が 可能となっている。高圧電源 ON/OFF、カメラ感度調整などが 制御可能である。この II CCD カメラ制御部には、飽和するような 強い光が入ったときに高圧電源が切れる過大入射光保護回路 が組み込まれており、安全に用いることができる。 温度コントローラも RS-232C ( 1200bps, 7bits, odd parity, 1 stop bit ) による遠隔制御が可能となっている。温度設定、 温度単位指定、温度呼び出し等の処理が可能である。設定温度への 制御はデュワー内CCDマウントに取り付けられているヒーターへの、 温度コントローラからの供給電圧のOn/Off制御で行っている。 制御ワークステーションではこれらの外部コントローラの 通信仕様を意識することはない。制御ワークステーションからは マスター CPU ボードとの通信のみであって、マスターCPUボードが これらの外部コントローラとの個別の通信を確立している。
OOPS制御ソフトウェアーは、観測者が効率よく観測できるように、 グラフィカルユーザインタフェースを用いたX11 ウィンドー上の 制御ソフトとして製作し、ローカルな制御とプロセス間通信による 外部制御メッセージによる制御を並行して実行できるようにした。 作成された制御ソフトウェアーの概観を図 ¥ref{fig:cont-soft}に 示す。 その詳細は別論文で詳述している( 佐々木他 1995a )。 図 ¥ref{fig:cont-soft} ¥¥ ¥hline
[ロションプリズム] | |
---|---|
材料 | 方解石 |
サイズ | 25 x 25 mm x t22mm |
有効径 | φ20 mm |
分離角 | 7 °( @ 633nm ) |
波長域 | 400 - 700 nm |
面平行性 | 2' |
面粗さ | < λ/10 ( @ 633 nm) |
AR コート | 両面 ( 400-700 nm ) |
[アクロマティック半波長板] | |
材料 | MgF2 + SiO2 |
サイズ | 15 x 15 mm |
有効径 | φ13 mm |
位相差 | 180 °±10 °(@ 400-700 nm) |
AR コート | SiO2 面 ( 400-700 nm ) |
[Pancharatnam型スーパーアクロマティック 半波長板] | |
材料 | 3素子(MgF2+SiO2)構成 |
有効径 | φ19 mm |
位相差 | 180 °±5 °(@ 380-900 nm) |
面平行性 | 2' 以内 |
面粗さ | 〜λ |
AR コート | なし |
略 号 | Unit | Device | encoder (bits) |
scale (per bit) |
min (mm) |
max (mm) |
range (mm) |
Notes |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガイダーX | 0 | 0 | 14 | 7.791 um | -41.785 | 53.732 | 95.517 | |
ガイダーY | 1 | 0 | 14 | 8.08 um | -3.415 | 64.415 | 67.83 | |
ガイダーシャッター | 1 | 1 | On/Off | |||||
ダイアフラム | 2 | 0 | 16 | 19.8" | cyclic | 6 preset positions | ||
第1フィルター | 3 | 0 | 16 | 19.8" | cyclic | 6 preset positions | ||
シャッター | 3 | 1 | On/Off | |||||
偏光ユニットスライド | 8 | 0 | 14 | 7.8125 um | 0.0 | 90.34 | 87.1* | 2 preset positions |
回転半波長板 | 4 | 0 | 14 | 1.32' | cyclic | |||
第2フィルター(グリズム) | 5 | 0 | 16 | 19.8" | cyclic | 6 preset positions | ||
CCD温度 | 6 | 0 | Dewar temperature control | デュワー温度設定 | ||||
ガイダーTV | 7 | 0 | IICCD camera control | 高圧電源、センシティビティー |
[制御命令] | ||
---|---|---|
MV | move with status report | |
MQ | move with no status report | |
ES | start exposure | |
EP | pause exposure | |
ST | request status | |
PS | request port status | |
HX | permit handset X | |
HY | permit handset Y | |
CN | cancel command | |
CA | cancel all commands | |
RR | stop CPU | |
EM | emergency | |
AX | auxiliary unit X | |
AY | auxiliary unit Y | |
AZ | auxiliary unit Z | |
[応答コード] | ||
MV | movement status | |
ES | start time of exposure | |
EP | pause time of exposure | |
EE | end time of exposure | |
ST | current status | |
PS | port status | |
HX | status of handset X | |
HY | status of handset Y | |
CN | cancel completed | |
CA | cancel completed | |
EN | end movement (MV, MQ) | |
ER | error status | |
AX | status of auxiliary unit X | |
AY | status of auxiliary unit Y | |
AZ | status of auxiliary unit Z |
ユニット | ストローク | 再現性 | 回転平面性$ | ガタ$$ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ハードリミット | ストローク | 往復 | 一方向回転 | 面内ガタ | ギアー系ガタ | |||
ADC値 | ADC値 | (mm) | (um) | (um) | (um(pp)) | (um) | (um) | |
ガイダーX | 2480 | 14740 | 95.5 | 2 | (スライド駆動 | |||
ガイダーY | 4333 | 12728 | 67.8 | 1 | (スライド駆動) | |||
偏光ユニットスライド部 | 2859 | 14415 | 90.3 | 1 | (スライド駆動 | 65 | 30 | |
ダイアフラム | 回転 | 4 | 5 | 148 | 40 | 30 | ||
フィルター | 回転 | 3 | 2 | 30 | 20 | 40 | ||
偏光ユニット | 回転 | 1 | 3 | 20 | 10 | 10 | ||
グリズム | 回転 | 3 | 3 | 34 | 50 | 20 |
OOPS 筐体(各ユニット含む) | 41.5 kg |
---|---|
デュワー(含 LN2 約半分) | 11.5 kg |
デュワーサポート | 10.5 kg |
ガイダー+ジョイント部(含 IICCD) | 55.5 kg |
IICCD コントローラ | 4.0 kg |
電気系ボックス | 17.3 kg |
合計 | 140.3 kg |
関連する図の Captions
図 1. OOPS 偏光撮像における積分時間 vs. S/N 比。
天体の表面輝度が 22 mag arcsec-2 と
23 mag arcsec-2 の場合について示してある。
望遠鏡口径 0.91 m、大気の透過率 0.8、
望遠鏡ミラー(主鏡、副鏡)の反射率 0.82、
偏光素子透過率 0.4、フィルター透過率 0.5、CCD 量子効率 0.5、
熱雑音 〜10-3、
CCD の読み出し雑音 〜10、デジタイズ雑音 〜0.8、
観測波長域 Δλ = 100 nm ( @ $550nm )、
測光時積分領域を 25 arcsec2 とした。空の明るさは、
19 mag/arcsec2 としている。
図 2. OOPS 光学系レイアウト
コリメータレンズ、カメラレンズによる
縮小光学系で、平行ビーム領域に偏光素子、グリズム、フィルター、
シャッターが配置される。この図ではグリズムは 90度回転して描いている。
焦点面には、アパーチャータッレット上にマスク
( 21.0mm x 16.2mm : 6.0' x 4.6' ) やスリットが置かれる。
CCD は、偏光プリズムによる像のずれを考慮して光軸から 3 mm ずらして
ある。
図 3. ロションプリズム内の光路
光学軸はプリズム1では紙面内左右方向、
プリズム2では紙面に垂直方向とする。(下図) 方解石製ロションプリズム
の場合の常光線と異常光線光路。常光線は直進し、異常光線は偏角をもって
射出される。
図 4. ロションプリズム異常光偏角の波長依存性
分離角 7度 ( 550 nm ) の方解石製ロションプリズムでの計算。
直進常光線は色分散がない。
図 5. 半波長板のリターダンス特性
現在使用しているアクロマティック半波長板( MgF2 +
SiO2 の2結晶2枚構成、有効径φ13mm )と新たに
製作したPancharatnam 型スーパーアクロマティック半波長板
(有効径φ19mm)のリターダンスを示した。
アクロマティック半波長板では、位相差が 400-700 nm で 180°±10°
以内となっている。
図 6. グリズム内の光路
上面が平面、下面がグレーティング面としている。
図 7. グリズム外形
刻線本数 400本/mm、プリズム頂角 24°42'、硝材は BK7 である。
ブレーズ波長は 550 nm で、ブレーズ波長を直透過にしているので
ブレーズ角はプリズム頂角と同じ 24°42' である。裏面には AR コート
を施した。
図 8. グリズム分散曲線
スペクトル次数 -3 〜 3 について示してある。-1次のスペクトルでは、
中心波長 550 nm で分散 488 Â/mm、5.9 Â/pixel である。
次数分離が不可欠である。
図 9. グリズムグレーティング面形状
グレーティング溝の頂点部が肩を持っている。
スタライス径 0.4 um、スキャン速度 3 um/sec にての測定(島津製作所)。
1次光(-1次)のスペクトル効率は約 60 % と測定されている。
図 10. OOPS視野配置
ロションプリズム(分離角 7度)による常光線像、異常光線像を並べて
CCD素子上に結像するために、望遠鏡焦点部に視野マスク( 21mm x 16.2mm;
6.0' x 4.6' )が置かれる。CCD 上で 7.8mm x 6.0mm (0.6"/pixel) に相当
する。グリズムによるスペクトルは、偏光素子があれば常光、異常光
スペクトル像として、偏光素子がなければ常光線スペクトル位置に
スペクトルが得られる。それぞれ視野内の方位と地理方位が示されている。
図 11. OOPS機械系レイアウト
機構部筺体は、ガイド部、OOPS 本体部、CCD デュワー部、及び
ガイド部・本体部間ジョイント部の4部から構成される。
CCDデュワー部は 90°回転して描いてある。}
図 12. OOPS 筺体 FEM モデルと最終モデルの変形図
(上図) OOPS 筐体はグリッド430点、構造要素としての4角形板 390 要素を
用いてモデル化された。
(下図) 最終モデルでの CCD 位置での変形は、天頂と天頂距離 45 度の間で
10 um の撓み差となった。0.46" に相当する。最大撓み量 28 um は
デュワーベース板端でおこっている。
図 13. オフセットガイダーの駆動範囲と焦点面での視野像方位
エンコーダ軸方向及び地理方位をあわせて示した。エンコーダの原点は
光軸上にガイドカメラ視野中心がくるように設定してある。 y < 35mm で
は、FOV 6' のビームが蹴られる。
図 14. ダイアフラム/フィルター/グリズム・ターレットユニット及び
偏光ユニット構造図
(左図) 6枚のダイアフラム/フィルター/グリズムが装着可能である。
モーター、アブソリュートエンコーダ( 16ビット ; 位置分解能 7 um )
と CPU 搭載の制御ボードが同架されている。
(右図) 偏光ユニットでは、半波長板が回転駆動される。エンコーダは
14ビット(角度分解能 1.3')である。
図 15. OOPS 用 CCD デュワー
OOPS 用 CCD デュワーは、CCD マウント用フラスコがデュワー本体から
張り出している。コールドプレートとCCDマウントは冷却アーム(Cold finger)
と銅箔数枚(Cooling strap)で結合されている。CCD マウントに設置されて
いる温度センサーとヒーターで、± 0.1-0.2 ℃ の温度安定性で制御され
ている。
図 16. CCD デュワー冷却特性
冷却開始時には約1時間で冷却温度に到達し、冷媒完全消費時には
4-5時間かけて室温に戻る。ヒータをOFFしている場合には最低冷却温度
-160 ℃ である。このデータ収集時には -140 ℃ に温度設定しているが、
現在の設定温度 -120 ℃ での液体窒素保持時間は 14時間以上である。
図 17. 偏光撮像分光装置OOPS概観
岡山91cmカセグレン焦点に装着されている。望遠鏡側からオフセット
ガイド部、ジョイント部、本体機構部、CCDフラスコとついており、
その左側に液体窒素デュワー、右側に制御用電気系ボックスが配置され
ている。
図 18. OOPS制御系ブロック図
OOPS制御系ハードウェアーは、OOPS機構部各ユニット制御系、
CCDカメラ制御系(Messia II)、デュワー温度制御系、
及び制御用ワークステーションで構成されている。
図 19. OOPS制御計算機とCCD制御 Messia II 用のVMEクレート
91cm望遠鏡制御室で、OOPS制御用ワークステーションとその
計算機ラック上にCCDコントローラがある。
図 20. OOPSユニット制御系ハードウェアーブロック図
ユニット制御用マイクロプロセッサー搭載ボードには、HD64180(8MHz)、
ROM 32KB, RAM 32KB、ユニット識別用の DIP SW,及び I/O が組み込まれ
ている。I/Oの違いによって3種類ある。マスター CPU ボードにはRS-232C
14チャンネル、ユニット搭載用スレーブ CPU ボードにはRS-232C
1 チャンネルと 24 ビットのパラレル入出力ポートを持つ。
図 21. OOPS制御ソフトウェアーブロック図
OOPS制御、Messia 制御、画像表示機能(SAOimage)、望遠鏡制御、
天候情報入力が、観測スケジューラとステータスロガーの統括下で動作する。
それぞれは独立したプロセスとしてローカルな操作も可能で、メッセージ交換
によって協調動作をする。
図 22. X11 上の OOPS 制御ソフト
観測者が効率よく観測できるように、グラフィカルユーザインタフェース
を用いた X11 ウィンドー上の制御ソフトとして機能している。