OASIS立ち上げマニュアル

奥村真一郎 1998年8月



目次

1. 真空引き、冷却
2. 望遠鏡への取り付け
3. ケーブル類の接続
4. 電気系の立ち上げ
5. 各部分の調整


1. 真空引き、冷却

1.1 真空引き

 真空引きは、常圧から引く場合(分解した後など)には遅くとも観測開始日の4日前から、増し引きの場合(分解していない場合)でも3日前には引き始める必要がある。バルブは2ヶ所あるが、中は同じ一つの真空容器なのでどちらから引いても良い。
 なお、観測中に真空が悪くなって増し引きをする場合は「増し引きの場合」を参照して下さい。

1.2 冷却(執筆中)

 冷却は観測開始日の2日前から始める必要がある。



2. 望遠鏡への取り付け

 冷却しながら、つまり冷凍機のホースはつないだまま、ホースがねじれないように気をつけながら望遠鏡の下に移動させる。バルブの付いている側が東側になるように望遠鏡に取り付ける。

 OASIS本体以外にラックを3つ、望遠鏡の下部に取り付ける。OASISのモーター制御用ラックは南西側、ガイダー用のラックは北西側に、VMEラックは西側の真ん中に、それぞれコネクタ部が望遠鏡の内側、電源ケーブル側が望遠鏡の外側になるように取り付ける。


3. ケーブル類の接続

3.1 スリット駆動用モーターの取り付け

 スリットを動かすためのモーター(右写真)はOASISを台車にのせる際にじゃまになるので通常はずしてある。これを
本体裏側(東側)に取り付ける。モーターを本体にねじ止めした後、わすれずに中のカップリングのところもしっかりと接続すること。
 モーターを取り付けたら、モーターのケーブルも忘れずにつないでおく。(写真中、赤い○印)

3.2 ピアつたいに観測室(制御室)から来るケーブルの接続

 ピアをつたって来るケーブルは冷凍機の関係のケーブルの他に7本あり(写真参照)、そのうち次の5本、すなわち を使用する。
残りの2本は現在使用していないのでどこにもつながなくともよい。(「テスト」、「遊び」のラベルが付けてある)

 検出器読みだし用の光ケーブルはVMEラックの上にあるコネクターに接続する。ガイダー用モーター制御光ケーブルはガイダー用のラックの裏側にあるコネクタに、OASISモーター制御ケーブルはモーター制御用ラック内側にあるコネクタにそれぞれ接続する。

 オートガイダーCCD用ケーブルはアクイジションガイド南側についているCCDカメラに接続、また温度コントローラー用ケーブルはOASIS本体の南側、下部にあるアナログエレキボックスの一番左側のコネクタに差し込む。

3.3 各ラックとOASIS本体をつなぐケーブル類

3.3.1 OASISモーター制御ラックとOASIS本体をつなぐケーブル

 OASISモーター制御ラックとOASIS本体をつなぐケーブルは全部で6本ある。うち分けは

である。

 電源用ケーブルはアナログ用とデジタル用の2本で(それぞれラベルが付いている)、アナログ用ケーブルは本体南側のアナログエレキボックスに、デジタル用ケーブルは裏側(東側)のデジタルエレキボックスにそれぞれ接続する。
 リミットスイッチ用ケーブルはアナログエレキボックスの真ん中のコネクタに接続し、フィルター用ケーブルは本体南側についているコネクタに、ミラー、グレーティング用ケーブルは東側のコネクタに、スリット用ケーブルは北側についているコネクタにそれぞれ接続する。

3.3.2 VMEラックとOASISをつなぐケーブル

 VMEラックとOASISを結ぶケーブルはデジタル信号用とアナログ信号用の2本である(右写真)。デジタル信号用ケーブルは本体裏側のデジタルエレキボックスに、アナログ信号用ケーブルは本体南側のアナログエレキボックスに、それぞれ接続する。

3.3.3 ガイダー用モーター制御ラックとOASIS本体をつなぐケーブル

とりあえず、渡辺さんに聞いて下さい。

4. 電気系の立ち上げ

 まず、各ラック(モーター用ラック、ガイダー用ラック、VMEラック)のコンセント、ファイバー変換器(VMEラックの上)のコンセントをつなぐ。モーター用ラックとガイダー用ラックは後ろ側にある白いケーブルタップのコンセントをつなげばよい。次にVMEの電源(後ろ側にある)、ファイバー変換器のスイッチを入れる。さらに、
モーター用ラックの一番下の段に入っている電源ボックスのスイッチを左から、
  1. 5V
  2. デジタル
  3. アナログ
の順にONにする。これで電気系は立ち上がり、検出器の読みだしができる状態となる。読みだしの方法はOASIS観測者用マニュアルを参照のこと。
 読み出しがうまくいかない時は電源を入れ直すとうまくいく場合が多い。ただし、OASIS本体の電源ONは必ず上記の順で行なうこと。

5. 各部分の調整

● 光軸調整およびフィルターホイールの位置調整

 OASIS光学系の光軸調整は前置光学系内の3枚の平面鏡のそれぞれについて2軸の調整を行うが、第一、第二の平面鏡については前置光学系の組み立て時に調整済みである。第三鏡も同時に仮調整されているが、この鏡を星の光を用いて調整することによって最終的に観測装置の光軸と望遠鏡の光軸を合わせる。 手順は以下のようにして行う。

  1. OASISの写野に明るい天体(3等級程度以上)を写野の中央に導入する。

  2. 望遠鏡の副鏡を移動させて焦点を外し、ビームパターンを表示させる。
  3. ビームパターンが円形で(リオストップの)スパイダーが見えていれば光軸が合っている。パターンが非対称な場合は前置光学系の側面の2軸を回転させて上記のパターンが見られるまで調整する。前置光学系の側面(右の写真)には3軸あるが、最も上の軸は関係なく下の2軸のうち上の軸を回転させるとOASISの画面で上下方向のパターンが変化し、下の軸を回転させると左右方向が変化する。常に画像を参照しながら少しずつ回転させること。軸の回り方がスムーズでない(特に下の軸)が気にしないこと。また下の軸は上の軸に比べて同じ回転に対して大きくパターンが変化するので注意すること。
     2軸を調節してもパターンが対称にならない時はフィルターによるケラレを疑う必要がある。フィルターが正常な位置(光軸がフィルターの中心を通っている状態)に停止していないと、ビームをケルのでパターンが回転対称にならない。フィルター枠の半径はビーム自身やリオストップよりも大きいので、ビームパターンが回転対称になっていない場合の原因は容易に見分けがつく。このような場合はフィルターホイールを回転させてケラレの状態の様子から光軸とフィルターの中心を一致させる。Filter1、Filter2 についてはそれぞれの window から reset、OKをクリックすれば自動的に調整を行ない、その後 Filter1 の場合 Cold Shutter、Filter2 の場合 none(素通し)に自動的に設定される。Filter3については自動調整機構がないので、adjust の入力欄に適当な数字を入力し(±500でフィルター1個分回転)adjust をクリック(←忘れずに必ず!)、OKをクリックすることにより少しずつ回転させ、調節する。

● 検出器の光軸方向位置調整(焦点合わせ)

 OASISの検出器は光軸に沿って移動させることができ、冷却状態で赤外線検出器の画像を使って焦点調節を行える。撮像観測の場合の焦点あわせはOASISの光学系と望遠鏡光学系をあわせたものになっているので、少々ならずれていても望遠鏡の副鏡を移動させて焦点あわせが行えるのであまり問題ないが(プレートスケールが微妙に変わる?)、スリットを用いる分光観測の場合は、望遠鏡の焦点とOASISの光学系の焦点の両方をスリット面上にあわせる必要がある。但し、通常は一度合わせるとOASISの取り付け取り外しを行ってもずれないので、分解を行った後などの場合を除いて焦点調節を行う必要はない。手順は以下の通りであるが、現在ワークステーションからリモートで操作ができない状態なので、画像を見ながら手動で軸を回転させる必要があり、最低二人以上の人数が必要である。

  1. 撮像モードで、適当な幅のスリットを導入する。
  2. このとき背景は明るい方が調整しやすいので、J-,H- bandで蛍光灯をつけたドームを使うのが良い(主鏡は開)。すなわち、この調整は昼間でもできる作業である。但し、すでに観測準備をして空に向けている場合はK bandにしてそのまま行っても問題ない。
  3. スリットのイメージがもっともシャープになるように検出器の光軸方向位置調節用のモーター軸を手で動かし、調節する。

● グレーティングの原点出し(執筆中、文章不完全)

 グレーティングのリミットスイッチに対応するLED(最も下にある緑のLED)は全周のうち一カ所で点灯する。LEDを見ながらグレーティングの角度を操作する必要があるので二人以上の人数が必要である。まず、SetupのメニューからGratingを選択し、adjustに適当な値(10000程度)を入力してグレーティングを回転させてみる。これを何回か繰り返し、LEDの点灯する位置をさがし、必要なら、adjustに負の値を入力することによりグレーティングを反対方向にも回転させ、点灯している位置で一度止める。その後少しづつ逆方向に回転させ、LEDが消灯したところで止め、もう一度正方向にゆっくり回転させLEDが点灯した後、正方向に低速で回転させる。そして、再度LEDが点灯する位置から1243パルス進めた点を原点とする。この原点は、四角いグレーティングキューブの1面が入射光軸に垂直になる角度である。

● フィルターの同定

 何らかの理由で現在のフィルターの位置がわからなくなってしまった場合にはフィルターの同定を行なう必要が生じる。Filter1、Filter2は reset を行なうことにより簡単に同定を行なうことができる。通常の使用ではめったにないと思われるがFilter3の位置がわからなくなってしまった時は、ケラレを調節した後にフィルター1つ分づつ動かして画面の明るさの変化を調べる。最も明るくなったところが素通しである。

● 最終ミラーの角度調整

 撮像モードと分光モードの切替えは最終ミラーの角度を変えることにより切替える。現在、望遠鏡の向き、モーター間のクロストーク、その他の原因でこの最終ミラーの角度がずれてしまうことがしばしばあり、調整を要する。調整の方法は、

  1. 撮像モードにして、スリット(どれでも良い)を入れる。
  2. Setup から Mode を選択し、スリットの像が SAOimage のほぼ真ん中に来るように調整する。スリット像が真ん中より上にある時はadjustに正の値を、下にある時は負の値を入力し、adjust、OKをクリックする。入力する値は最大でも±200程度にしておくのが無難である。
     最終ミラーの角度がずれると、撮像の場合には画面にケラレ(大抵の場合下方両端(片側だけの場合もある))が生じる。また、分光の場合には波長方向のずれとなって現れる。


奥村真一郎
国立天文台岡山天体物理観測所