OASIS改修:今後の課題
OASIS改修グループ

改修後に残された OASIS の問題点

OASISの設計に先だって、日本の典型的なシーイングサイズとして予測された 値は、1-2 arcsec であり、1 arcsec以下になることはかなり稀であろうと考えら れていました。当時より、諸外国のシーイングの良いサイトでは、画素スケールを 0.25 arcsec/pixel 程度するのが一般的であり、OASISと同様に NICMOS 3 検出 器を利用すると 1 arcmin × 1 arcmin の視野が一度に得られます。この視野の 大きさは、可視撮像カメラの視野と比較するとかなり狭く、拡がった天体の観測 をするのは大変に困難でした。 そこで、OASIS開発グループは、日本のシーイングサイズが大きいことを積極的 に利用して、広い視野を得ることを選択しました。そこで、画像スケールは、 1 arcsec/pixel と決められ、視野は 4 arcmin × 4 arcmin となっています。

しかしながら、OASISによる観測が始まると比較的早い時期に、シーイングが非 常に良い夜には星像の半値幅が 1 arcsec 前後となることが判明しました。さら に、最近行われた 当観測所と京都大学による観測時シーイング調査 によれば、可視域(有効波長は 650nm)のシーイングサイズの最 頻値は 1.4 arcsecです。このデータをもとに近赤外の最頻値を予測すると、 1.1 arcsec と なり、1/3 の頻度で sub-arcsec のシーイングとなるこ とが判明しました。岡山のシーイングは従来いわれていた 2 arcsec 程度という 数値よりはかなり良いことをここで強調しておきます。


図:OAOシーイング統計。可視の実測データが実線。2.2 umの予測が赤。

すると、ここで問題点が生じます。under sampling となるために、測光精度が 悪くなるからです。それは、画素内の感度ムラによって生じます。NICMOS3検出 器の画素内部の感度ムラは、画素中央で感度が高く画素境界で小さくなっている ようです。実際に、under samplingの光学系で、画素内感度分布が測光精度を落 している例が Hubble SpaceTelescope に搭載された NICMOS 観測装置の CAM3 に見られます( Storrs et al. 1999) 。ただ単純に測光するだけでは、0.4 等級に のぼる測光誤差が確認されています( Lauer 1999)。

問題の解決方法

これを解決するには、やはりナイキスト・サンプルとなるように画素スケールを 変更する必要があります。しかし、現在使用している NICMOS3検出器を利用して 改修すると、必然的に視野を狭くさざるを得ません。これでは、あまり有難くな いので、より画素数の大きな HAWAII検出器(HgCdTe 1K × 1K)を利用して、岡山 で予想される最良シーイングサイズ(0.5 arcsec) でもナイキストサンプリング を満たすように、画像スケールを 0.25 arcsec/pixel とすると都合が良いです。 この画素スケールと HAWAII 検出器で実現できる視野は 4 arcmin × 4 arcminで、 丁度現在のOASIS とおなじ視野となります。

さらに、短い時間でのグレードアップを図るため、現在の OASIS のクライオ スタットはそのまま利用することとしました。コリメータの焦点距離を現在の ものと同じ距離としたので、前置光学系は置き換えることによってグレードアッ プが実現できます。

このグレードアップ作業は、2003年1月より行われる予定です。


2002年3月22日更新: 文責:柳澤顕史