195 定金:では最後のプログラム問題の議論に入る。午前中の寿岳講 演のサマリがつみ残しになっているという事なので最初にお 願いしたい。 寿岳:谷口さんから要求があったのでサマリを述べる。「188cm 望遠鏡のプログラムに関して色々と問題があることは認め る。しかしながらレフェリー制の導入には強く反対する。」 家さんから先程競争社会か福祉社会かというシビアな形の質 問があった。福祉という言葉は好きではないが、この話を聞 くと最近の「民営化」の議論と同じ様な危険を感じる。この 問題については私は左翼の立場にたって反対する。その理由 を述べる。プログラムのテーマが毎年本質的に変わっていな いことは先程述べた。これは皆さんでチェックしてほしい。 このことを考えると、レフェリーの立場にたってプログラム に優劣はつけ難いというのが私の基本的認識である。従って それを小数の何も知らないレフェリーが恣意的あるいは人気 投票的なことで判断されては新しい差別を生じる。これは社 会正義にもとる問題である。 岡村:これからの議論の仕方について提案したい。私はこの問題 を象徴的な言い方ではあるが、「シビルミニマム」対「レフ ェリー制」の対決ととらえて、そこから議論を始めるのは妥 当ではないと考えている。理由の第一は、「シビルミニマム」 ということが現実に存在するかという疑問、またこれを言わ なければ観測時間が貰えない人はいないはずということであ る。(反対!レフェリー制を導入すれば今観測できている人 ができなくなるということでそれは定義そのものである)私 はその時シビルミニマムと言うことが論点になって観測時間 が貰えたり貰えなかったりするのではないといっている(シ ビルミニマムを唱えなかったら貰えなくなるのである。話を 理解していない。)というのはみんな研究テーマを立てて申 し込みをし、それぞれに成果を挙げているからである。第二 の理由は、「レフェリー制」ということについて人々のイメ ージが多様性に富んでいて、「レフェリー制」ということだ けでは共通の土俵に上がれないからである。これは最終的に は、良い天文学とは何かということについてレフェリーでは 判断ができないということにつながることである。従って最 初に述べた対決を議論の出発点とするのは妥当ではないと考 える。しかしそうは言っても岡山の観測プログラムに色々な 問題があるという現実が歴然として存在する。第一点は岡山 188cmのプログラムが超過密であるということ。(超過密で はないということを私は述べた;色々な数値が出されたが、 現実に2〜3日程度という割当になっており、機器交換が非常 に大変であるという現場の感覚の方が統計的な数値より正し いと思う;現実とは感覚ではなくて数字である。)第二は、 機器開発の時間とマンパワーがとれないということ。第三は 特に地方のいわゆる孤立研究者にとってデータ処理が非常に 困難になっていること。そうしてそれらの結果として若い世 代が光の観測に展望を見いだせなくなっているという状況に なっている。この状況は今生まれたものではなく、こうした 議論はすでに長い間行われてきた。最初にこのことが議論さ れ出した頃から考えると、随分と新しい情勢が生まれてきて いる。それは主に二点に要約されよう。第一は、国立大学共 同利用機関が誕生することになったこと。このことは、コミ ュニティとして使えるお金が多少は増える、JNLTプロジェ クトが走り出す、既存望遠鏡のプログラムは何らかの委員会 によるレビューを受けるという意味を持つ。第二は我々が利 用できる望遠鏡の数がかなり増大したと言うことである。特 に海外望遠鏡の使用実績が年間400人日といった水準にまで なり、海外学術調査によって天文コミュニティに投入された お金は正確な数字は知らないがここ2〜3年は年間1千万円 を超えているのではないかと思う。このことは、岡山188cm が唯一の望遠鏡といった時代とはかなり違った情況を生み出 している。一方国内の望遠鏡も少しづつ整備されそうなきざ しが見えてきた。昨日講演のあった電波研や宇宙研の赤外線 望遠鏡、木曽のシュミットにCCDカメラを作る話なども出て いる。「岡山の観測プログラムに問題はある、そして色々と 新しい情況も生まれて来た。ではその中で一体我々はどうし ようとしているのか」という点がまず議論の出発点になるべ きだと私は考える。これは決断の問題である。決断した結果 とるべき道は大きく三つに分かれると思う。第一は、特に何 も意見は出さない、つまり成行きに任すという道。第二は、 積極的に現状のままを保つということを表明する道。第一の 道を選ぶと、前述の委員会の委員に選ばれた方々が責任上何 らかの決断を下されることになって、コミュニティの意見は 生きないことになろう。仮に第二の道をとったとすると、現 状のままを保つということが果して共同利用の委員会ですん なり通るであろうかという心配がある。数字が正しいのか感 覚が正しいのか微妙だが(数字が正しい)このままではどう にもならないのではなかろうか(n o n!)。私はこの二つの 道を選ぶと光天連の自治能力を問われるという事態になるの ではないかと恐れている。そこで第三の道は、何とか改善の ための手を打とうということで、まずこの点で皆さんの合意 がなけれは、シビルミニマムやレフェリー制についての議論 をしても仕方がないと考えている。だからまず、この情況を 何とかするのだという点で合意が得られるかどうかというこ とから議論を始めていただきたいというのが提案である。 小平:私としては午前中の市川さん、寿岳さんの講演を聞いて、 まだどうして若い人達がフラストレートし、我々自身も観測 時間が少なくなったという気分になっているのかその情況の 把握と分析が十分でないような気がする。市川さんの出した データもそう大きく間違っていないような気もするし、寿岳 さんのデータもきちんとした根拠に基づいたもので、岡山に 行っている総時間は各観測者について増えているということ も事実のように思える。それにもかかわらず我々がせっぱつ まったような気持ちになっているのはどういう訳かというこ とを私なりに考えてみた。我々のやっている観測天文学の構 造的変化が積もり積もってそういう事になっているのではな いか。その一つは、アップ・デートな観測をしようとすると、 装置が高度化しているということである。74インチ開設当時 は、ともかくお仕着せの装置で、写真を使っていたため、乾 板が上手に切れて、現像が自分ででき、あとはそれをマイク ロデンシトメータにかけられれば一流の仕事ができるという 時代であった。ところが現在はCCDはじめフォトン・カウン ターにしてもかなり装置が高度化している。もう一つは、寿 岳さんの指摘のように74インチ開設当時にあった観測テーマ 資  料 スクリーニング制(レフェリー制)導入についての議論 光学天文連絡会シンポジウム(1988年1月26,27日開催  於東京大学総合図書館会議室) 集録より抜粋
196 のほとんどは現在も生き続けている。それに加えて新しいテ ーマも出てくるので、少しずつではあるがテーマ数が増加し てきている。特に木曽のシュミットが動き出した頃から、銀 河の観測が暗夜に対しては増えている。観測装置の高度化と テーマの増加というのが、日本の観測天文学に構造的変化を もたらした要因としてすぐ気がつくものである。その影響と して、昔は一人行けば良かったのが、最近ではソフト担当、 ハード担当と行った形で3人くらいが1観測チームというよ うになり、2人くらいだと観測所の人に加わって貰うことが 多い。1回のチームがそういう編成でテーマは多様化してき ているので、ABCDを、BADCと変えるような形でいくつか に組替えてグループとして周辺の人を少しづつとり込みなが ら多様なテーマに対応しているという状況になっていて、確 かに一人の人が岡山に行く日数は増えているが、グループ化 が進み申し込み課題数は増えているような気がする。その結 果一課題あたりのユニットが3.6から2.6夜に落ちる現象を生 んでいる。このことが装置が高度化したことに逆行する向き に働いている。装置が高度化すればそれをセットアップする 準備期間及びならし込みの期間も長く必要だし、事後処理も 大変である。観測に入ってからも、フラットフィールドをと るとかキャリブレーションをやるとか手間がかかる。装置が 高度化してなおかつ有効性を落とさないためには、前後に十 分な時間が必要である。観測所側でもできるだけ機器交換を 少なくするよう工夫はしているが、実際には2.6夜を戴いて観 測に行き、装置に慣れてキャリブレーション用のデータをと り込んで、さてオブジェクトという時になると曇って帰ると いったケースが以前に比べて多くなっている。このように構 造的変化に対応しきれないためにますます非能率化に陥って いるという側面があることは十分考えないといけないと思 う。若い人のフラストレーションについては、最近では自分 一人でプロジェクトを切り盛るということが少なくなってい ることがあげられよう。寿岳さんの講演にあったようにたと えばABCDYといった形でしかヤングが関われなくて、しか もそれが能率の悪い観測だったりする。若い人は最先端の装 置の観測に関わりたいと思うのは当然だが、実際行って見る と現場には矛盾があることを知る。写真から始めたような世 代は、アブソリュートに見ればCCDなどが出てきて能率が上 がったということで多少満足しているのかも知れないが、最 新の装置から入った若い世代のフラストレーションは非常に 大きいのではないかと思う。構造的変化についての私の認識 はそんな所だが、ではどうするかが問題である。望遠鏡が増 えたといっても共同利用できるものは限られている。装置が 高度化してきているので、昔は74インチでしかできなかった 仕事が91cmでも充分できる時代に入ってきている訳で、清 水さんの指摘のように、91cm天文学を腰を据えて見直して、 91cmに高度な装置をつけられるかどうかという検討をする ことが、構造的問題の解決には不可欠である。適切なグルー プを組織して91cmにCCDカメラをつけるとか分光器をつけ るとかいう取り組みにコミュニティとしてかかれるかどうか が光天連の自治能力を問われる問題であると思う。 寿岳:小平さんの意見には100%賛成である。問題を矮小化して 188cmだけに限るのは良くない。岡村さんのOHPに示された ダイアグラムはある意図を持って書かれたフロー・ダイアグ ラムであり賛成はしないが、しいてあのルートに従うとする と、私の意見は「現状のままを保つ」というのでもないし、 「成行きに任せる」というのでももちろんない。私の提案を 述べる。その前に話は少し横道へそれるが、HSTのプログラ ムの作り方とも関係するので紹介したい。HSTのホスト・イ ンスティテュートの立場からは、対政府との関係で応募が多 ければ多いほど良いわけで、世界中に宣伝してプロポーザル を出すように言っている。大体10倍くらいの応募が来ること は確実であろう。つまり落ちるためのプロポーザルを書くこ とも天文学者として政治的理由から必要かもしれない。しか しそれとは別に実際にHSTを使って天文学をやることを当然 考えておくべきである。HSTの場合、もちろんすべての天文 学者が集まって議論してもまとまらないので、まず大きな分 野を定めてそれぞれの分野にどれだけという形で時間を大分 けする。(所長預かり分の10%があるが、これは5%にしろ という意見が強い。)その三つの大分野に対応してコミッテ ィがあり、更にそのコミッティ内に研究者のコミュニティー から出発した数多くのサブグループがある。そのコミッティ の段階で、実際に天文学をやる立場から十分な議論をして、 ターゲットに優先順位をつけ、競合しない形できちんとした プロポーザルを用意しようという活動を、先ほどの10倍出す というのとは別の意味で進めているグループもある。188cm のプログラムは大別してブライト・ランとダーク・ランに分 かれる。ブライト・ランは第一義的には星の観測である。星 のプログラムについては過去20年間のものをつぶさに拝見し た。たとえはブライト・ランだけについて言えば、何もレフ ェリー制度を設けなくても、研究者間の話し合いで、岡村さ んのいう自治能力を発揮できるプログラムを作れると確信し ている。先に述べたHSTの場合は私は定金さん、比田井さん と一緒にインターナショナルに作られたCP starのグループに 入っていて、現実にそうした形でプログラムを提出する予定 である。次にダーク・ランの現状のプログラムについて意見 をのべると、第一近似で言えばABCD組合せを変えて複数課 題が出されている。従って本質的にADCD内の問題であり、 さらに別の研究者グループA′B′C′D′もあるが、まずサ ブグループABCDで徹底的に議論し、サブグループの内のサ ブグループで出しているプログラムを相互に批判することが 大切であると思う。必要に応じてABCDとA′B′C′D′と の話合いもあった方がよい。結論としてダーク・ランについ ても、全体の合意でいくつかのサブグループがどのくらいの 時間を持つかを決め、そのサブグループの中でインストルメ ンテーションも含めてどういうプログラムを出すかを話し合 えば今のような細切れの状態は脱却できるはずである。反論 があればお伺いしたい。 家:普段は穏健派だが今日は過激派の発言をする。寿岳さんの御 意見は、私の理解では談合をせよということで、ダーク・ラ ンの人達は談合をして決めよということである。(いえ、そ うは言っていない。・・・いえ、まあそうですね。)談合 をした場合に自由競争という観点から若い人に公平に観測時 間を保証できるであろうか。むしろ談合でない方が競争原理 の上からは公平になるのではないか。 岡村:私のOHPについて寿岳さんは何か特別な意図があると誤解 されたようだが、実はもう一枚OHPを用意している。しかし 一枚目に示したように、我々はこれからどうするのかという 点で合意が得られなければ、次にとるべき方策の議論に移れ ないと思ったので途中で間を置いただけであり、一枚目の OHPには何ら色はついていないと諒解して欲しい。一応なん らかの対応をとるという雰囲気ではあるようなので、次にこ れまで色々な場所で色々な方々がこの問題の解決のために出 された提案を私なりにまとめて掲げて議論のたたき台として 戴きたいと思っている。寿岳さんの提案の「研究者間での相 互批判による調整」という意見は今日初めて出たように思う のでこのOHPには入っていない。第一点は岡山のデータ処理 機能を段階的に強化することである。岡山のスペースとマン パワー、三鷹の天文学データ解析・計算センター、JNLTの データ処理室との関係など問題はあるが、例えばイメージ・ ディスプレイ1台を導入するだけで、当面かなりの展望が開 けると思う。第二点はPDFの話である。これは必ずしもポス トドクでなくてこれからドクターをとろうとしている人でも よいと思う。ここでは岡山にとなっているがもちろん堂平も 含めて考える。一観測所に2名程度欲しい。最大の問題は財 政面であると思うが、国立研で使えるお金が明確になった時 点で、他の事とのバランスも考えた上でぜひ考慮して戴きた 第7章
197 いことである。第三点は、評価基準についての事である。岡 山188cmの申し込みに何らかの評価をしなければならないか どうかはまだ決まっていまいが、もし評価するとなったら、 純粋にサイエンティフィックな観点から適切な評価をするの は難しいと言うのはかなり共通の認識のように見える。一方、 データをとるだけとって解析もしないし発表もしないという のは良くないというのも共通の認識のように思える。従って、 どうしても何らかの評価をすることが必要になったら、「過 去のデータの取得状況と解析の進展度」を当面の基準とする 考えはどうであろうか。第四点は、岡山188cm、91cm、太陽 クーデ(夜)、堂平91cm、木曽シュミット及びUH88インチ などへのプロポーザルの申請に当たって、小暮委員長挨拶の 言葉で言うと「全国的視野での連絡・調整」を行うというこ とである。UH88インチは外国の望遠鏡だが、特別な関係に あり毎年10%近くの観測時間を得ていることからぜひ一緒に 含めたい。これは小平先生がどこかで言われたと記憶してい るが、具体的提案として、「海外望遠鏡に申請し、通れば旅 費が貰えるステータスにある研究者は、その期の国内望遠鏡 (とくに188cm)の申し込みを自粛する」事にしてはどうか。 国内望遠鏡の運用がこれほど困っている状況で、年間1千万 くらいものお金が投入されている外国望遠鏡の利用が、国内 望遠境の運用と実際上、無関係に行われているのは何かおか しい気がする。現実に同じ期の観測が外国と国内の望遠鏡で 重なって、一方(国内)をキャンセルするというケースもい くつかでており、現場の担当者が申請者の真意を測りかねる という例もある。もしこれが合意できれば、少なくとも岡山 188cmへの申請課題の数を減らすことにはかなり貢献できる のではないかと考えている。もしそうしたことができるなら、 具体的対応として、岡山188cm(だけとは限らないが)の申 し込み時に、現在よりも詳しくデータが書けるフォーマット で、海外望遠鏡への応募状況(予定)、過去の岡山及び海外 望遠鏡によるデータの取得状況、そのデータの処理状況など を書いて種々の判断の材料とすることも考えられよう。また UH88インチについてはいわゆるプログラム・レフェリー制 を適用することが望ましいとの意見が強いと思う。第五点は、 当面撮像については木曽シュミット、測光については岡山及 び堂平の91cmの活用を促進する。これと併せて、小平さん、 清水さんから御指摘があったように、91cm用のCCDカメラ や木曽シュミット用のCCDカメラなどの先端装置の開発と整 備を進めて近い将来かなりの課題が188cm以外でもできるよ うな体制を作り上げてゆくことである。結論として、広い範 囲の望遠鏡にプロポーザルを最適化して分配できるシステム を作り上げることが大切であるということになろう。望遠鏡 の中には昨日講演のあった赤外線望遠鏡も何らかの形で含め うるかもしれない。形式的な問題としては、色々な望遠鏡の 運用をまとめて面倒を見る委員会のようなものがうまく構成 できるか、各望遠鏡への応募時期や一応募期間の違いをどう 勘案するかなどが挙げられる。しかし我々コミュニティの中 で共通の認識と決意があれば少しづつでも実現して行けるの ではないかと思う。 定金:今の話はサマリ的なものだが、議論の進め方についての考 え方も入っている。 安藤:私は今までの議論の筋道に賛成で、二つの選択をつきつめ て議論するのではなく、そろそろ岡山188cm一本の時代は過 ぎてきたので、岡山のシーイングと天気を考えるとどんな天 文学に割ふったら良いとか、UHでは天気がよいので、こう いう天文学をやるべきだとか、そんな意識を皆さんが持つよ うになったら解決して行けるものだと思っている。例えば昨 年末は岡山でも天候が良く、銀河の人といえども満足のゆく データがたくさんとれた。そういう状況があれば、たとえば 全夜晴れてシーイングが良ければ現在のプログラムでも消化 できるだろう。それができないということは天気が悪く、シ ーイングも悪いということがあるということで、そんな中で プロダクティビティーのある天文学は何かということをそろ そろ考える時期だと思う。そう多くはないが少しづつコンデ ィションの違う望遠鏡ができてきたのだから、どういう天文 学にはどういう望遠鏡が向いているかを考えながらプロボー ザルを書くことを徹底するようにすれば解決の糸口が見つか るのではないか。そういう方向で議論を進めると良い。どう いったスクリーニングをすべきかは後で検討するとよい。 前原:午前中にユーザーズ・コミッティの議論の経過を報告し た。重複することになるが、現実的な組織・システムとの摺 り合わせを考えてみることが必要である。国立研になると、 光学赤外・太陽関係の専門委員会ができて、その下にプログ ラム委員会と呼ぶようなものが作られると思う。そこが実際 の観測プログラムを作る作業をし、188cmについても行う訳 だが、他の望遠鏡も扱う可能性は高い。UH88インチについ ても、プロポーザルが通ったら旅費を保障するということに なると、国立研を通じての海外学術研究ができるようにする ことが必要であろう。つまりこの「プログラム委員会」でか なりの数の望遠鏡を総合的に見てゆくことになろう。ユーザ 側もそのことを意識して、この委員会にどういう機能をもた せたいかを検討するのがよい。具体的作業としては、委員会 がレフェリーに評価を依頼するとか別の方法で評価をすると か色々なやり方がある。レフェリー制というとある「レフェ リー」を思い浮かべることになるが、申請のあった観測プロ グラムをその委員会で申請通り割付けることは不可能で、た とえば、この申請はこちらの望遠鏡にまわすといった何らか の評価はせざるを得ないと思う。先ほど話に出た、「岡山で はどういう天文学がよいのか」といった議論はプログラム委 員会というよりは専門委員会あるいはScientific Advisery Committee(SAC)のような所でやるべきであろう。プログ ラム委員会が何でもやるのではなく、ここでは割付けの実務 作業的なことをやり、こことその上か横かにあるSAC的な所 との絡みで評価を行うのが、その時にレフェリーとが必要な のかそうではないのかということになるのではないだろう か。 渡部:今の前原さんの意見に賛成である。レフェリー制を言って いる若手の中でも、岡村さんのOHPにあったように、レフェ リー制のイメージは統一されている訳では決してない。一つ の象徴としてレフェリー制という言葉を使っているだけであ る。「30cmでできるような観測は91cmには申し込まないで欲 しい」と近藤先生の講演にあった。同様のことがもし岡山 188cmにもあって、堂平でもできる、あるいは岡山91cmでも できるという課題があれば、それを「全国的視野での連絡調 整」ということで調整する広い意味でのレフェリー制という 主張もあって良いと思う。レフェリーから採点が返ってくる ようなバリバリのレフェリー制を最初からとるのではなく、 最初は調整的な判断を入れるという意味でのレフェリー制が 必要なのではないかと思う。それも若手の育成ということに かなり重きを置いてやるという方法がよいのではないかと思 う。 寿岳:今の問題は昔から山下さんを中心とするプログラム委員会 で十分検討されてきている。36インチでもできることは申請 者に話してそちらに回って貰った場合もあると理解してい る。その意味では現在採択されているプロポーザルはすべて きちんとしたスクリーニングを通っているものである。 渡部:そういう例がこれまでどの位あったかを山下先生にお伺い したい。 山下:急に尋ねられても正確な数は思い出せないが、年に一つ位 か。 太田:岡村さんが出したスキームは正しいと思う。その線で話を したい。「ではどうするか」という問題提起がされて、「交通 整理をしたら良い」とか「36インチでやれるものはそれでや れは良い」とか案が出たが現状ではほとんどできない。例え ば74インチのニュートンで写真をとるとかCCDで撮像する場 資  料
198 合、36インチに同様の装置があればできるものもあろうが、 現状ではないために74インチを使わざるを得ないということ がある。こうした状況なので、どうしたらやりくりができる のか明らかでない。PDFをつけるとか観測装置を開発すると かして36インチの活用を図ろうというのであればそれはそれ で賛成だが、どの位リアリティーがあるか心配である。 小平:同じ主旨のことを言おうとしていた。現実にプログラムの 割当てに苦労している所としては、調整も一生懸命やってい るが、他へまわせるのは先程の話で出たように年に1〜2件 である。しかしそれは現在の各望遠鏡の使い勝手を前提にす るからそれ位の数にしかならないのである。仮りに91cmに CCDカメラがつくというようなことになれば、もっと数は増 えるだろう。次に91cmにCCDカメラをつけることにどの位 リアリティーがあるかだが、それにリアリティーがあまりな いからといってよりリアリティーのある、たとえばプロポー ザルを半数にしてやはり74インチに申し込むといった方法を とれば、若手の育成にも役立たず結局先細りということにな るかも知れない。先まで見通してどちらが良いかということ は、リアリティーの問題だけではなく慎重に判断する必要が ある。リアリティーは低いけどやはり取り組まなければいけ ないということだったら、コミュニティとしてその道を探ら なければいけない。91cmにCCDカメラをつけるということ で、コミュニティとして科研費を申請するなどして努力して ゆく方が長期的に見ると良いと考える。その一方で、現在プ ログラムの振り分けについて、ある程度の判断はしているが、 集まった人達だけでそんなに高いconfidence levelの判断はで きないこともあるので、毎回とは言わないが時にはコミュニ ティとして皆さんの意見を伺うチャンスがあって良いと思っ ている。寿岳さんの指摘があったように、ダーク・ランにつ いては関係するグループが自分たちのテーマについて整理し てみて、どれは91cmにCCDカメラをつければできるとか、 どれはハワイでやった方が良くて74インチの時間をこんなに 食うのは良くないとか、そうしたことを関係者で検討してみ ることが必要である。これは91cmにCCDカメラをつけると どの位メリットがあるかを評価する上でも必要なことであ る。たとえば、岡村さん、家さん、若松さんくらいでダー ク・ランのプロポーザルのレビューをやって見る、それから ブライト・ランについても、91cmにCCD付きの分光器があ ればできるといった仕事について、たとえば定金さん、安藤 さん、平田さんくらいでレビューをできるだけ早い機会にや って見ることが適切であると思う。光天連シンポジウムはこ のところ体制やJNLTで手一杯であるが、3年に1回くらい は、皆が観測に申し込んでいる自分のテーマについて、学会 とは違った意味で、全体とのバランスも考えて発表し、色ん な人からもっとより良く観測するにはこうしたらどうかとい った示唆を戴く機会を設けたらどうであろうか。 磯部:議論の対象としては色々あるが、一つには寿岳さんが表面 にたって反対しておられるようなアーギュメント−「シビル ミニマム」という言葉は嫌いだが−がある。望遠鏡を使って 観測データを出したい光の天文学者がたくさんいて、データ を得ることだけが天文学であるというセンスの人も多い。写 真乾板から入った人とそうでない人との時代のギャップがあ り、現在はトランジションのフェイズにある。今の観測は装 置を作ってそれに熟知していないと、写真のセンスだけを持 った人では天文学ができない側面もある。そういう層の人達 が今一つの問題点として残っていると思う。今日の議論では 「36インチに移れば良い」というように、「望遠鏡」という観 点で議論されているが、装置まで含めた議論になっていなけ ればいけない。誰でも装置を作れるような状況であれば、望 遠鏡があればそれを持って行ってつければ良いのだから望遠 鏡を言うだけで良い。一世代前の写真乾板の場合はそのよう であった。今これがクリティカルな状況にあり、岡山の観測 を見ていても、ABCDの組み換えがあるが、いつでもたとえ ばBという人が上から下までずっと入っているという状況が ある。その人が居なければ他のグループは観測できないケー スである。堂平にも同様のケースがある。このような状況の 時に望遠鏡だけの振り分けで済むのかという問題がある。そ こを忘れてしまって、天文学だけの議論をすると優劣をつけ たくなるし、望遠鏡ということになると一杯あるではないか ということになる。検出器は100倍良くなったのだから1/4 の口径で同じ天文学ができるはずであるという議論が出る。 それが本来の議論かも知れないが、45才以上は不器用である というファクターも考えなければならない。堂平で赤外線観 測やスペックル観測を自分たちで装置を作って細々とやって いるが、それをやるにはそれなりのお金が要る。若松さんが よく言われるように、「地方大学にはお金がないので中央で きちんとやって欲しい」という意見があり、現状は確かにそ んな状況にあると思う。装置を作る能力とお金を取ってくる 能力がプロボーザルを出せる人すべてに備わっているのなら 自由競争でもよいが、レフェリー制でバッサリ切られると困 る人が大勢いるという現状があるので、5年、6年と議論し ても結論が出ないということになっていると思う。私も最初 はレフェリー制がよいと思っていたが、寿岳さんに代表され る潜在的45才以上の人の考え方も常に残っていることは確か である。それをエイヤッとネグってリーダーシップを取って ゆける人が居れば、反対は強く出るとしても事態は進むが、 このようにコミュニティ全体で議論するという行き方をする と、そうした人達を説得できない限り永久に物事は決まらな いのではなかろうか。15年位すると皆さんきちんと装置を使 える人達が集まるだろうからこんな議論はしなくても良いの かも知れない。野辺山と光の分野とは違っていて、野辺山は もともとそういう所がない点である。 家:先程の岡村さんの問題提起にあった、「何かをするのかどう かの決断の時期である」という点に議論を戻していただきた い。午前中市川さんが示した「プログラム編成の提案」とい うのは、色々なバックグラウンドがない時には非常に素直な 発想であるという気がする。若手育成と機器開発を重視しな がら100くらいあるプログラムを全部受け入れると現状のよ うな細切れにならざるを得ない。それを現在のままにしてお くのか、それとも1プログラムあたりの日数をアウトプット が出る位に増やす、機器交換もあまり頻繁だと調整ばかりで 使う時間がないということになるので、せめて同じシステム で1週間位は使うようにし、そのために50がよいか70が適当 かはわからないが、年間受け入れる総プログラム数の上限を 決める、という具体的な方策を決められないかと思っている。 そのへんでいつまでたっても決断ができないということで は、日本の天文学の将来は特に若手育成という観点からも展 望が開けないと思う。 寿岳:プログラム数を決めるのは賛成である。繰り返して言うが、 私の言っていることがまだ全然理解されていない。先程の私 のスキームではそれは本質的にABCDの人の問題である。自 分たちのグループで2.5日にならないように、何が大事かを決 めてプログラムを整理しなさいと言っているのである。具体 的に言うと家さんは86年に32日、87年に13日岡山に行ってい る。もちろん家さんはインストルメンテーションの重要な役 割をもって行っているのだろうが今後も同じスタイルで何年 間もやるのですか。同じことが谷口さんにも言えて、86年に は22日、87年には実に25日行っている。私も個人的には谷口 さんの世話になっており負担をかけているのだが、このあた りの所を関係者で議論すべきではないのか。 谷口:確かに私はこの数年間岡山ではたくさん観測時間を戴いて いろいろデータをとってきている。しかしヘッドで行ってい る部分は年間1週間位だと思う。いわゆるIDARSS関係で頼ま れて行くということがあって、私が非常に多いということで はなく、IDARSSを使いたいという人が非常に多いという事 実を示しているだけだと思う。従って何を批判されているの 第7章
199 か私には理解できない。私は25日行っていて、銀河なのでダ ーク・ランである。私がヘッドの分は1週間、寿岳先生がヘ ッドの分が3日とかそんな具合いに色々ある。そのダーク・ ランのグループで協議しろということか。(そうである。)そ れでは基本的に意味がないと思う。(どうしてか。)どういう 価値判断でやるのか。(それはレフェリーがやることを、相 互に批判しあって研究者自身がやるということである。)そ れはレフェリー制と同じではないか。(違う。グループのテ ーマが何も理解できない他人が判断するよりも一番良く知っ ている当事者側の判断でやるからである。) 家:それをやると若い人はどうしても発言力が弱いので、若いア イデアを殺すことになる。若い人はどうしても年長の人をヘ ッドに立てないと通らなくなる。(若い人については先程別 の批判をしたつもりだ。) 寿岳:もしそうだったらそのヘッドの人が若い人の代弁をすれば 良い。 定金:今の議論は重要だと思うのでもう一度整理して発言をお願 いしたい。 家:寿岳さんの言うように、似たような問題意識を持っている観 測グループは必ずある。そうしたグループの中で話合いをし てプログラムをつめてゆくことも大事なことと思う。しかし それにはおのずと限界がある。各グループの力関係や立場が 平等な場合はうまくゆくが、そこに強弱がある。たとえばあ の人は機械が使えるとかそんなことがあった場合には、発言 力に強弱が出てくる。そんな時に、そういうレベルで調整し てしまう方が良いか、それぞれ独立にプロポーザルを出して、 (誰が判断するのか;誰が判断しても問題はあろうし、絶対 的な判断が出来るとも思っていないが)外で判断して貰う方 が内部で調整するよりも自由競争の立場から言って公平な判 断ができる場合があるのではないかと思う。 谷口:家さんと同じ意見である。UH88インチの問題もあるし JNLTも控えていて我々は完全に国際化の中に入ってゆくの で、一定の競争力を養う必要がある。具体的にUH88の問題 を考える。仮に我々が1割、先方が9割使うとする。どのよ うにして我々でその1割を選ぶかは決っていないが、UHの最 良で決めた9割から出てくるサイエンスと我々の1割から出る サイエンスが比較されることになる。不安な人はcitationを調 べるかもしれない。日本のオプティカルの実力はまだまだ足 りないと考えている。従ってユーザが団結してブラシュ・ア ップしてゆくシステムが必要ではないかと思う。寿岳先生の 言う通り、誰がレフェリーをしても、正しい判断ができるか どうかは神のみぞ知ることで、それは仕方のない問題だと思 う。お互い批判があればユーザーズ・ミーティングでポスタ ーを貼るなり何らかの手段を通じて議論すれば良い。色々な 手段を尽くせばある程度公平な判断ができるのではないか。 そうしたreviewing systemを作ることによって、お互い良い 意味での競争社会で刺激を感じながら仕事ができるようにな れば岡山の有効利用に向けて更に道が開けて行くのではない かと思う。 渡部:今の発言に補足する。きちんとしたプロボーザルを書くと いうことは若手の育成のためにも必要なことである。私は学 生の時に初めてプロボーザルを書く時に、プロポーザルは落 とされると思って一生懸命書いたのだが、ある人から「みん な通るから適当でいいんだよ」と言われた。そうなると若手 は一生懸命勉強してプロポーザルを書く気を失ってしまう。 そういう意味で切磋琢磨という言葉通り、レフェリー制なり 何なり外から見たきちんとした判断を入れるということが若 手育成のためには是非必要ではないかと思っている。 山下:落とされることはないから適当に書いたら良いなんてこと は絶対言ってはいけないことである。 渡部:少し言葉が足りなかったが、あるスタッフからそう言われ たことがあることは事実で、だからといって私はいい加減に 書いたということはない。それは自信を持って言える。 寿岳:先程谷口さんの言ったブラシュ・アップというのは私も言 ったことで、つまりface to faceで同筆者と議論するのが一番 良い方法である。プロポーザルを書く練習が必要であるとの 発言があったが、これは私も認める。UHの望遠鏡の使い方 についても岡山のようにやれという気は毛頭ない。これはテ ンタティブな提案であるがUH88については、若い人への練 習の意味もあり、また将来JNLTができた時にはそうならな ければならないので、逆に英語でプロポーザルを書ききちん と選択するシステムになれば良いと思っている。現実に今ま で申し込んだ人はそれでやってきた。次は次第にデリケート な問題になるが、光の望遠鏡が電波望遠鏡やX線望遠鏡と違 う点は、時間を割り当てられたら後は完全に観測者の自由で あるということである。そして私の質問はこういうことは倫 理的に許されるかということである。もし許されるのならそ れはプロポーザルと別に観測者にライセンスを与えたことを 意味しており提案のレフェリー制とは別の原理を採用したこ とになる。極端な言い方をすると競争社会の激しいアメリカ では、プロポーザルを出す時には本当の目的は書かない。こ れはテクニカルな話であるが、プロポーザルは通るようなも のを書かなければいけないが、本当にやりたいことは書かな いようにする人もいる。時間を貰ってから実際の観測の割り 振りを考える。いわゆるギャンブル的なものはプロポーザル が通りにくいので、リジェクトされない程度の別のテーマで プロポーザルを通しておいてからそれを観測するという厳し い世界がある。次に私がレフェリー制に反対するのは、さし あたり日本の場合はレフェリーがオタンチン(!)ばかりで あるということが大きな理由であるが、それとは別に実際の ところ「皆さんはプロポーザルに書いた通りに観測しますか」 ということを問いたい。これは谷口さんにも家さんにも問い たいことである。これは明らかにプロポーザルの精神に反す ることで、不公平を生むことになる。 市川:先ほどからの寿岳先生のお話で気になった点を一つ。「レ フェリーがオタンチン」とか「何も知らないレフェリー」と かの御発言があったが、そういう面もあるのかも知れないが、 そういってしまえば日本の中心となる雑誌PASJに光の論文を 出しても正当に評価されないということを認めておられる訳 か。 寿岳:全然違う。論文のレフェリーはプロボーザルのレフェリー と違って全世界のきちんしたレフェリー制度を採用している 雑誌と同質の規準で判断している。なお、雑誌の場合とプロ ポーザルの場合のレフェリーの本質的な違いは、前者は絶対 的基準があって、すべての論文が原理的には通りうること、 後者は相対的評価でプロポーザルをリジェクトする役割を果 たすことである。 市川:どうしてプロポーザルのレフェリーをそういう規準で選ぶ という考えにならないのか。矛盾していると思う。 寿岳:それをやろうとすると具体的には大部分外国の人に行かな ければならないことになる。 市川:もう一度言う。観測のレフェリーがオタンチンなら論文を 判断するレフェリーもオタンチンと言うことか。 寿岳:全く違う。繰り返して言うが、パブリに投稿された論文に ついては、そのようなオタンチンなレフェリーには見て貰っ ていない。評価をするのは世界中で誰が一番適任かというこ とを判断してやっている。しかも複数レフェリー制をとり、 その複数の組合せによって最善のものが待られるようなシス テムになっているので、今の市川発言は全然間違っている。 市川:岡山のレフェリーではどうしてそういうことができない か。 寿岳:岡山の場合も世界中からその問題に対して一番適当な人を 選ぶということなら話は別である。私の理解では岡山のプロ ポーザルは日本語で書いてレフェリーも日本人だけでやるの だと思っていた。それ以外のことを考えている方がいたらお 話願いたい。 資  料
200 市川:私は必ずしもそうは思っていないが、本質から少し外れる のでこれまでにしておく。 太田:同じような観点からだが、寿岳先生はUH88やJNLTにはレ フェリー制が必要だと言われるのに、岡山188cmのレフェリ ー制に反対されるのはどうしてか。 寿岳:一番簡単には、「岡山の188cm望遠鏡の使い方には特徴の ある25年のプログラムの歴史の重みがある」ということだ。 (具体的にはどういうことか。)−それは先程から話してい る。 太田:要するに岡山にレフェリー制を導入することに反対の主な 理由は、プロポーザルが第一近似としては優劣がつけられな いということと理解してはいけないか。(その通り。それは 午後の最初に言った。)そうするとJNLTができた時でも同じ 理由で判断できないということになってしまうのではない か。 寿岳:いや、JNLTの場合はインターナショナルなレフェリー制 をとる。 太田:そうではなくてレフェリー制が必要であるという根拠は何 かということだ。第一近似として優劣がつけ難いということ であれはJNLTでも同じことが起きる可能性が十分ある。従 ってJNLTにレフェリー制を持ち込むのには他の理由がある はずだ。 寿岳:いや、JNLTの場合は信頼できるレフェリーを選ぶシステ ムを作る。(その根拠を聞いているのだ。)それは世界第一級 の望遠鏡はそれにふさわしい成果を出さなけれはならないか らであり、そのことは岡山の188cmに期待されていることと 本質的に違うことだからである。 西村:少し別の観点から、岡山のホスト・グループの立場からお 話したい。先程小平さんが話されたように、1回の観測の割 当期間が短いために色々なロスが起こっている。我々はこの ことをまず避けたいという希望がある。現在年間80回の割当 期間があるが、それを半分に減らせば1回あたり約1週間に なる。これは非常に望ましい線である。そこで提案は、いず れかの方法によってこれを実現したい。第一にはあまりリア リティーのない話かも知れないが、割り当てることになった ものの半分を抽選で翌年度にまわす。そうするとエフェクテ ィブには同じことになって1観測期間が長くなる。そういう ことは考えられるか。つまり自分の観測が翌年度まわしにな ったり、2年に1回しか当たらなかったりするが、エフェク ティブには同じことであるということで満足して貰えるか。 もう一つは午前中の市川さんの話にあったように、一般的な 観測プログラムと機器開発のためのプログラム、それに観測 所として特に推進したいプログラムといったものの間にウェ イトをつけて割り当てることができるかということである。 これは全体的な議論を皆でしなけれはならないが、そういう ことを認めて貰えるか。私はこれまでもこうした機会にイン プリシットにもエクスプリシットにも述べているが、少しづ つは評価を行っている。それによって少ない振幅ではあるが モデュレーションをかけているということは事実である。市 川案にあったような形で、それをどの位の割合にするかまた 誰が判断するかということは別にして、ゆるやかなモデュレ ーションをかけていくということはどうか。次に先程からレ フェリーがオタンチンかという議論があるが、寿岳さんが考 えておられるレフェリーというのは、集まったプロポーザル に対して2〜3人を選ぶとすると、オーバーラップが少しあ っても何10人という人が関わることになる。そうなるとユー ザーズ・コミッティでも話が出たように、レフェリー間の評 点のキャリブレーションの問題は複雑な連立方程式を解くよ うなことになり難しい。そういうものは全体としてどういう 研究を重視するかのコンセンサスができたとすればおいおい には可能になるのかもしれない。しかし出発点としては、プ ログラム小委員会あたりが評価をやってゆくということから 始めるのが良いのではないかと考えている。 定金:今の話には2年に1回という提案が含まれていたのか。 西村:いや、そういった形になるであろうということである。 小平:ゆるやかなモデュレーションをプログラム小委がかんでや るというのは具体的にはどういうことか。 西村:ある重要なプログラムは毎年1回割り当てられるかも知れ ないが、一般的なプログラムは2年に1回になるかも知れな い。 定金:しかし1週間という単位を確保するのか。 西村:そのあたりを目標にしている。 谷口:私はJNLTやUH88はインターナショナルだからレフェリー 制をつける。ただし岡山はいらないという発想は基本的に間 違っていると思う。というのは、寿岳さんの言い方によると 「オタンチン集団が7.5mに挑戦している」ということになっ て、それは大変な冒険であると思う。私はもっと基本的立場 に立って、1.9mを生かしてこそ次の7.5mに行けると思うわけ である。2.2mなり7.5mでやる方法論をなぜ1.9mにも適用して 努力しようとしないのか。先程論文数の統計が示されたが、 Statistical significanceはわからないが、一番の特徴は publication rateが大体一定であるということである。普通バ ックエンドが効率的になるとgradientは別にして、論文数は 漸増することが期待されるはずである。ところが寿岳先生の 示された統計では一定となっているということは、やはり 1.9mがうまく機能してこなかったという証拠ではないかと思 っている(とんでもない)。それともう一つ、光天連の会員 は寿岳先生だけではないということを言っておきたいと思 う。寿岳先生のような考えの方がいることは認めているし、 そういう意見を排除しようというつもりは毛頭ないが、寿岳 先生は自分の考え方にそぐわない場合は威圧的なコミュニケ ーションの仕方をされる。ここには出席されていない何10人 あるいは100人オーダーの天文学者がいる訳で、そういう人 達が全く色々な立場で色々な考え方を持っているということ を認識して戴きたい。皆の共通認識は、日本の光の天文学を レベルアップしてゆきたいということである。これは寿岳先 生も認めていることで、あまり堅い価値観にとらわれずにも っとフレキシブルに考えるということも御考慮戴きたいと思 う。 磯部:今の谷口さんの発言の意味があまり良く理解できない。寿 岳さん一人が光天連の会員でないと言うのは当然のことで、 他にも会員が大勢いてここに出席していない人もたくさんい る。私はそうした人の声を寿岳さんが代表していると認識し ている。寿岳さんが言っていることが、そんなことで異常で あるとは思わない。寿岳さんを排除するような言い方は止め てほしい。 谷口:私はそういうつもりはない。そう受け取られると心外であ る。そういう点があるとすると影の方々がずるいのかも知れ ないがいつも寿岳先生だけが表面に立っている(だからそれ が問題だと言っている)。もっと皆が自由に発言して一つの 目標に向かった方が良いのではないかと言っているのだ。 寿岳:比田井さんのメッセージを読んでほしい。 定金:先程までおられた東海大学の比田井さんがメモを残して行 った。寿岳さんの要求があったので紹介する。「私立大学、 地方大学にいる人間は、教育のデューティが相当きつく、共 同研究者の不足(大学院生も含めて)などにより論文生産率 が悪くなりがちであるということがあります。それでレフェ リー制を施行した時、プロポーザルの採否を何で決めるのか ということは現状でははっきりしておりませんが、もし論文 数が一つの目安になるのなら、明らかに私立大学、地方大学 関係者には不利になりましょう。いわゆる国立研の中央研究 者のモノポリーが進むように感じられます。この点について、 レフェリー制導入に賛成の方々の御意見を伺いたく存じま す。」 どなたかお答えがあればうかがいたい。 磯部:先程の私の話は長かったのでポイントをつかんで戴けなか ったような気がする。光天連のメンバーは現在二百何十人く 第7章
201 らいいる訳で、そういうグループでやっている。その人達は ともかく7.5m計画を支持し、光の天文学を進めようというこ とに賛同している。こういう場合のやり方は二つであり、ネ ゴシエーションをとりながらコミュニティ全体として進んで ゆくのか、強いリーダーシップをとれる人が決断を下して引 っぱってゆくかのどちらかしかない。今ここで議論している のはネゴシエーションをとる作業をしているのであって、5 年間もかかっているのは私としては非常に不満であるが、ネ ゴシエーションがとれないのだから仕方がない。もう一方の やり方も進んでいない。つまり誰かが決断するというレベル にはなっていない。寿岳さんに代表される意見は、天文学全 体を進める上では私自身は切り捨てても良いのではないかと 思っているが、ネゴシエーションをとるというやり方でいく 以上は、その意見も聞いてネゴシエーションをとってゆかな ければならない。その点から言って、寿岳さん一人に責任を 押しつけられると私は不満を感じる。 谷口:若いということで逃げるつもりではないが、私としては多 くの方々の御意見を良く知っている訳ではないので、こうし た公の場で意見をいっていただかないと判断材料が揃わな い。(それは私も谷口さんに賛成であるが、現実にそうでな い人がたくさん居ることも事実として認めなければならな い。)レフェリー制というのも名前ばかりが先走っていて、 具体的にどういうものかもわかっていない段階であるので、 比田井さんの質問にもあったように、何を規準にしてやるか など考慮すべき点が色々ある。そのあたりも含めてまだまだ 議論していかなけれはいけないと思う。 関:少し話が飛ぶかもしれないが、光・赤外関係の人が共同利用 研の設備を共同利用するに当りどんな点を重要視しているか を問うアンケートの結果を紹介する。1位は機器をきちんと して欲しいで24%、以下ビジター・サービスをきちんとして 欲しい16%、データ解析システムの充実16%、プログラム編 成に気を使って欲しい14%、レフェリー制について考えて欲 しい10%となっている(複数回答)。この順位などは大体電 波の分野と同じであるが、電波関係で多かったのは「レフェ リー制をもう少しちゃんと考えて欲しい」という意見(18%) が「機器の整備」(19%)に次いでいる。 小平:「レフェリー制をもう少しちゃんと・・」という「ちゃん と」はどういう意味か。 関:それは読みとれない。(電波ではレフェリー制をやっている のか。)やっている。(やっていながらちゃんとして欲しいと いうのはうまく機能していないということか;  やり方に不 満な人が居るということだろう。) 太田:二つのことをお話したい。第一はレフェリー制のイメージ が多様であること。要望書を出した若手の中でもそうであり、 今回出された地方大学の人の心配などは若手にも共通するも のである。京都の若手の中でも、どういう規準でやるのか、 たとえば地方の研究者は論文の数だけではやらないとか色々 な方法を検討して、皆が納得できる規準を作ってはじめてレ フェリー制が実現されるといった雰囲気はあった。だからレ フェリー制即点数至上主義という形で反対というのであれば 話はかみ合っていないと思う。レフェリー制についての要望 書を出したといっても、そんな議論のあるレベルである。第 二に私のように若いものにはどんな意見がどのように分布し ているのかよくわからない。Mlの頃から「影の声」はあると 聞いているが具体的にはつかめていない。たとえば光天連の 中で、岡山のユーザーを対象にした意識調査をやるのはどう であろうか。客観的データが必要だと言われているし、そう いうものがないといつも同じ議論の繰り返しになるような気 がする。 石田:話がかなり複雑になってきているが、記憶に残っているの は小平さんの言われた構造変化という話と状況変化という言 葉である。構造変化については磯部さんが45才以上と以下の 天文学と言われたことで良くわかった。状況変化としては、 望遠鏡の話があり、木曽のシュミットにもCCDがつくことに なり、堂平をどうするとか、更にはUH88インチの話にもな った。特に国内の場合には「91cmなどにCCDカメラを整備 してゆくことをこのコミュニティで努力してゆこう」という ことだったように思う。そういうことに対応することはもち ろんであるが、私は比田井さんのメッセージに心を打たれた ということも言っておきたい。家さんの話にもあったように、 税金を使っているのだから自由競争で立派なアウトプットを 直ちに出してゆかなければならない側面がある一方、投資も してゆかなければいけない。投資には二つあって、一つは若 い研究者を育ててゆくことで、これは近い将来のプロダクテ ィビティにすぐつながる。もう一つは比田井さんのように、 私立大学にいる研究者がとにかく研究を続けてゆけるように 国立研の方でもサポートや励ましをすることであり、これは そうした人達が学生を教育してその学生が次の世代として天 文のコミュニティに入ってくるという意味で投資である。こ れからの岡山、あるいは国立天文台の経営上、どれだけをア ウトプットに向けてどれだけを投資に向けるかという観点か ら300日を200日と100日に分けるという議論も考えられると 思う。単に効率だけを考えるのでなく、色々な側面から投資 という点についても考えるべきであろう。また、岡山を実際 にランさせるにはプログラム数を半数程度にしたら良いとい う話もあり、私には議論はほとんど出尽くしたと思える。こ のあたりをまとめて、ともかく何かをやるということで、西 村さんの提案にあったプログラム小委で少し具体案を考えて いただいたら良いと思う。時間はかかるかもしれないが。 兼古:私は昨年の光天連シンポにも出てないし、ユーザーズ・ミ ーティングにも旅費が出ないなどで出席できなかった。この 雰囲気を非常に新鮮に感じて驚いている(笑)。つまりその 程度のレベルということである。岡山クラスの望遠鏡ならば、 どのくらい切り落とすかは別として、レフェリー制というか 何らかのチェック機構が当然必要であると思う。しかし、と もかくも足切りとしてレフェリー制を導入するということに ついては、地方にいるものとしては積極的には賛成できない。 地方にいるものとしてはレフェリー制でもそうでなくても旅 費の保証のある制度をむしろ望みたい。プロポーザルを書い て、あたっても旅費がないということではどうにもならない。 私の場合昨年、一昨年は岡山へ行く旅費を科研費から回して 貰ったが、その科研費は昨年で終わりなので88年については 旅費のメドがない。そのため前期は岡山に応募しなかった。 野辺山のレフェリー制で経験したことを二つ申し上げる。レ フェリーをする立場になると寿岳さんが言われたように本当 に困ってしまう。テーマは違うが、どれも同様のレベルで有 能な方はできるかも知れないが私の場合点をつけるというこ とはとてもできない気持ちになる。自分がプロポーザルを出 す側になった場合、野辺山ではともかく足切りというか数を 制限するためのシステムである。3年間は続けて観測させて 貰ったが、一昨年、昨年と採択されず結局2年間空いてしま った。1年おきに1回という話が先程出たが、1年間位は良 いかも知れないが、2年も空くと3年目にプロポーザルを出 す気力さえなくなってしまう。実際に足切りの方策としてレ フェリー制をとることになれはボツになるものは出るであろ うが、その場合でも、2年3年と続けて落ちるといったことが ないように工夫した制度にして欲しい。若手が育つためには レフェリー制度が必要だという意見もあったが、中年が首を くくらなくても良いような方策も考えて欲しい。 定金:だいたい予定の時間が過ぎた。光天連の委員長は不在だが、 実は委員長から、できれば方向性を見出して欲しいと頼まれ ていた。それは引き受けられないと言ってあったが、その通 りになったのかも知れない。 岡村:私がまとめを言うつもりではないが一言。毎回同じ議論を していると言った人もあったが先程の石田さんのお話を聞い ていると、これまでの光天連の会合でこの種の話をしたもの 資  料
202 の中では今日が最も議論が良くかみ合ったという印象を持っ た。色々な人の考え方、意見や提案のメリット・デメリット が今までの中では一番良く理解できた。もちろん今回の議論 で何かがまとまった訳ではないが、皆さんの考えの共通集合 はどんな所かということはかなり明らかになったと思う。そ こでこれからどういう風にまとめてゆくかといった観点から の発言があればそれを戴いて締めくくりたいと思う。 磯部:今の岡村さんの意見に賛成であり、また先程の石田さんの 発言もまことに適切なものと思う。私に言わせればこれだけ の議論を5年間もやってきて、皆さんの共通認識と共通でな い認識が明らかになってきた。その所でネゴシエーションを しなければならないという観点から具体的な提案をする必要 があろう。たとえば、家さんがこう言うと何か違うことを考 えているのではないかといった類の心配があるようではだめ で、「こうこうの理由でこうしたら良いのではないか」とい う提案を色々と出して、どれがネゴシエーションがとれそう かということを検討してゆくのが良いのではないか。私自身 この前の体制WGで一つの提案を出したがともかく案は持っ ている。もし時間がまだあり話を続けられるようならその案 を話しても良い。 岡村:ここで色々な提案をすべて出して議論するということはで きないだろうから、今後どうするかという方向について発言 を戴きたい。私は少なくとも、最初のOHPにあった「何とか 改善のための手を打とう」ということで皆さんが合意したと いうステップは越えたのだと思っている。 石田:シンポジウムでは色々な議論が出たということで、あとは 運営委員会を開いてそこでお決めいただいては如何であろう か。 定金:磯部さんが一つの具体案をお持ちということであったが、 ここでそれを話していただくには時間が足りない気がする が・・・。 小平:シンポジウムだから、具体案があるのであれは情報として 伺っておきたいと思う。 磯部:私はこんな議論にこんなに時間がかかるということに不満 を持っている。一方ネゴシエーションがなかなかとれないと いうことも事実であると思う。将来に向かっては、JNLTは もちろんUH88もレフェリー制をとらなければいけないと思 うし、谷口さんが言ったように世界に匹敵するような観測を しなければいけないし、書かれたプロポーザル自体もハイ・ クオリティのものでなければいけないという考えには賛成で ある。ただ現状では、コミュニティとしてその様なことにフ ィットする状態にはなっていないことは認識しておく必要が ある。そうした両者をミックスすると言う観点から私の考え たことは次のようである。その前にもう一つ前提条件を加え ておく。それはエンジニアリングのレベルが今の状態である ということも事実として認めておくことで、それぞれの人が レベルアップしてもらわなければいけないが、色々な環境の 方々が居る。比田井さんのレポートもあったし、45才以上と いう議論もあった。そこで、観測プロポーザルは現状のよう なものでなく、例えば野辺山の様式のようにもう少しディテ ールを書くようにする。つまり一つ一つの観測が明確にわか るように、たとえば2日間の観測時間とすると、その中での 割り振りまで検討したプロポーザルを出すという条件を課 す。そのrefereeingについて、天文学的にやろうとすると合 意がとれない現状であるが、エンジニアリングの面からはや れると思う。その作業をやる中で、たとえば「堂平36インチ を使えば良い」という議論が出たときに、それにはどういう お金のサポートがあるのか、時間やマンパワーはあるのかと いった議論をそのエンジニアリングで落ちたプロポーザルを 出した人と委員会との間でイテレーションするという作業を やる必要があると思う。レフェリーはやるが、それはエンジ ニアリングのフィージビリティを重点としたrefereeingを当 面はやる。当面が2年か5年かは今後の議論で決めれば良い。 要約すると、「当面はエンジニアリングを最重点に置いたレ フェリー制を行う」というのが私の提案である。 田中:そのエンジニアリングというのは、写真のように必ずうま くゆくものを指すとは理解しないが、どういう意味かもう少 し説明を願いたい。 磯部:自分で自分の首をしめることになるが、CCDを岡山の36イ ンチにつけたいというプロポーザルを出す時に、どういう人 が何をどの位の日数受け持ってどういう作業ができるといっ たことを書き、それがフィージブルであるかどうかを評価で きる人が評価する。岡山には現在たくさんの装置があるが、 74インチで使っているものを36インチで使いたいというプロ ポーザルを出す時には、その配置換えのことまで書かれたレ ポート(プロポーザル)が出されていなければフィージビリ ティが達成されたとは思わない。最初の数年間はフロントに なる方は非常に大変な作業になるかと思う。 田中:それは今の観測プロポーザルとは少し違う装置開発のプロ ポーザルのようなものではないか。 磯部:いえそうではない。たとえば74インチのカセグレンにCCD をつけるといった現存のものでできるようなものなら数人の 人でできる訳で、そんなものは無条件に通すということで良 いのではないか。それが今とれるネゴシエーションの範囲だ と私は理解している。そういう観測では困る、私は36インチ で一週間なり10日欲しいという時には、こういう観測装置を こういう風につけなければいけないので、自分達のチームは こういう格好でできますというプロポーザルを書き、それが フィージブルだと判断されれはやって貰うということにな る。 家:それはプログラム数の整理のための提案ということにはなら ないのではないか。 田中:今言われたようなことをやるためには、特に非常に良いも のだったら特殊な人しかできないことになる。非常に時間の かかることではないかと思う。 磯部:たとえば写真乾板をつけてやる観測なら特殊な人でなくて も私でもできる。それに天文学的意義があるというプロポー ザルなら、今の段階では基本的には通すべきである。今のネ ゴシエーションのとれている範囲の中ではそうせざるを得な い。 田中:装置だとかなり客観的に判断できるように言われたが、そ こにもかなり人の考え方のはいる余地はある。極端なことを 言えば、「写真は時代遅れだから一切排除する」という考え 方もあろう。 磯部:私はそういうことを言ってはいない。エンジニアリング的 にフィージブルなものはすべて通すということである。 田中:そのやり方で、一つの観測テーマ当りの時間を長くとると いった事が実現できるであろうか。 磯部:当面は変わらないだろう。それはそうだが、また5年間こ うして同じ議論をするよりはよほど良いと思ったから提案し た訳である。 定金:今後このような提案をいくつかして戴いて、ある時点では やはり決断をしなければいけない。 家:今まで色々な話が出たが、具体的で建設的な中味を持った提 案の一つとして市川さんの提案がある。運営委員会でどうい う具合いにされるかわからないが、現状を打開する方向での 提案を十分検討して欲しい。 定金:それでは予定時間も30分超過したので、これで終了させて 戴く。本シンポジウムを終えるに当り、光天連事務局長とし て色々と御苦労をいただいた清水  実さんから御挨拶をいた だきたいと思う。 質疑・討論及び総合討論の部分の記事は録音テープから起こし、 主な発言者にチェックして戴いたものから作成した。一部カ ットや順番を入れ換えたところもあるが、出来るだけ忠実に 議論を再現したつもりである。 (シンポジウム世話人) 第7章