174 岡山天体物理観測所の設置に際して、岡山県始め 地元自治体はその観測・研究への協力と支援を約束 し、当時の三木岡山県知事と稲田文部事務次官とが 道路、敷地等地元に関わる全般的な覚え書き(P181 資料参照)を交換した。そして、岡山県はこの覚え 書きに盛り込まれていた展示館(博物館)を、県知 事と東京大学総長との協議の上で当観測所構内に設 置した。その運営は岡山県と地元の金光、鴨方、矢 掛の3町と東京大学とで構成された運営委員会によ り行われ、展示品の新設や運営方針について協議が 行われてきた。 この施設は全国的にも珍しい天文・宇宙に志向し た博物館であり、展示や模型等を豊富に備えて一般 見学者への窓口として機能している。特に、初期の 頃は「おかやま天文教室」という冊子を発刊し、関 連の研究者が寄稿するなどして天文学の普及に努め た。なお、国立天文台への改組(1988年)にあたり、 岡山県からこの館の運営の移管について打診があ り、協議の結果鴨方町が引き受けることとなった。 なお、移管に際して、15mプラネタリウムと15cm 太陽望遠鏡とが設置され、新たな魅力が加わった。 天文学の一般への普及という観点から、岡山天体 物理観測所は地元や岡山天文博物館と協議しながら これまでいくつかの試みを行ってきた。観測所の公 開については別項に記述するが、一般への普及を目 的として、講座・講演や研修等に対処している。流 星群や明るい彗星の出現等一般の関心の高いイベン トがある場合、職員が地域の学校、公民館、クラブ、 グループ等の要請を受けて、解説を行う等している。 中でも、長期間継続的に開かれているものとして、 鴨方町教育委員会主催の「天文講座」がある。当観測 所に共同利用のため来所する研究者に依頼し、興味 あるテーマについて町民会館等で講演を行っていた だいているが、これは鴨方町の文化行事の一つとし て定着し、多くの定常的な参加者を数える。 また、地元の学校や教育機関に協力して、児童・ 生徒に対しても説明や講演を行っている。例えば、 地元の小中学校では遠足や社会見学の目的地として 当観測所を選ぶことがあり、学年やクラスでまとま って見学に来所することがある。また、職員は夏休 みの子供向け星空教室に出向いて指導したり、時と して高校や大学の学生にも、地学や天文学の授業の 一環として講演や研修を行ってい る。最近では広島大学主催の高校 生の物理関係の研修として、太陽 の分光観測等を当観測所で行った。 第6章 岡山天文博物館 天文講座 図6−3 岡山天文博物館全景と博物館内部の様子