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1.環境保護
岡山天体物理観測所における天体観測のためには
良好な観測環境、なかんずく夜空の暗さが不可欠で
ある。観測プログラムの編成においても、主として
新月期には暗い天体の観測を、満月期には明るい天
体の高分解能観測、あるいは近赤外域の観測を行っ
ている。当観測所が岡山県および近隣自治体の誘致
を受けて開設された経緯は、その後この問題に関す
る地元の協力に引き継がれている。
当観測所の観測環境保護に関する事項を挙げる
と、すでに開所以前の昭和32年(1957)に周辺の環
境を保全する一つの施策として「鉱区禁止」の決定
がなされた(P182資料参照)。これは観測所から半
径2km以内の地域では、鉱山の開発やダイナマイ
トによる発破工事等を禁止するもので、内閣府に所
属する公害等調停委員会によって所轄されている。
平成12年(2000)には観測所の近くを通過する県道
矢掛−寄島線に遙照山トンネルが開通したが、岡山
県(井笠地方振興局)との緊密な協議の下に、工事
期間中の発破の振動を監視し、また、開通後の騒
音・光害の防止のために、看板を立てる等してドラ
イバーの注意を喚起している(図6−5)。
国際的にも天体観測に対する夜間照明の影響は世
界各地の天文台で問題となり、国際天文学連合
(IAU)ではこれに対処するために第50委員会を設
け、検討を行った。そして、国際照明委員会(CIE)
と協同して研究を進め、昭和55年(1980)に「天文
台近郊の都市光による空の明るさをおさえるガイド
ライン(指導基準)」を発表した。これによれば、
天文台周辺地域の自治体等に対して、照明器具の種
類や設置・運用方法について規制や協力要請を行う
よう、示唆している。
また、過剰な夜間照明は天体観測に障害になるだ
けでなく、市民の夜の生活を脅かす。例えば、道路
脇の広告照明が交通の傷害になり、また付近の夜間
照明が睡眠を妨げる等の被害を及ぼす。さらには周
辺に生息する動植物にも、生育不全等の悪影響を与
えている。つまり、光害の防止はその根底では環境
保護に通じている。国(環境庁)も光害を一般の公
害に準ずるものとして位置づけ、最近(1998)「光
害対策ガイドライン」を制定した。都市部から山間
部までの個々の地域に対応した照明器具設置の基準
を示し、国家レベルで社会や地域における光害の防
止に乗り出している。
2.夜間照明と光害防止
観測所のサイトは十分な観測環境を調査した上で
決定されたが、開所の翌年(1961)には南東約
15kmの距離に位置する水島にコンビナートの建設
が始まり、またそれ以降の商業や工業の振興に伴い、
当観測所は夜間照明による夜空の明るさに悩まされ
ることとなった(P177写真参照)。まず、夜空の明
るさを暗い状態で保つよう、以下に記述するように
種々の活動や要請を行い、協力をお願いしてきた。
そもそも光も過度になると害になるという認識、す
なわち「光害(ひかりがい)」は、当観測所の活動
によって社会一般にも知れわたるようになった。
夜空の明るさは時刻や気象条件で大きく変動する
が、現在の当観測所の状況は好条件のときで自然の
夜空の2倍〜数倍程度(天頂でV〜20等/平方秒)
である。直接撮像観測では空の明るさが天体の背景
に一様な明るさで入り、また、分光観測においては
ナトリウムのD線(589nm)とその付近、および水
銀のシャープな輝線が天体のスペクトルに重なって
顕著に現れる(図6−4参照)。前者は主に道路照
明に用いられている高圧ナトリウム灯からのもので
あり、後者は蛍光灯や水銀灯等の一般家庭や小規模
の屋外照明からのものである。
光害防止対策としては、本観測開始の昭和37年
観測所と社会のかかわり
観測協力連絡会議