142 下図(図5−4)に示すのは、5年ごとの観測天 体種別の比率の変化である。この図から明らかなよ うに、観測天体はこの間に大きく変化している。す なわち、初期の頃は星(恒星)が過半数を超え、星 団・星雲や銀河・銀河団が残りをシェアしていた。 80年代から銀河・銀河団等の遠い微光天体の比率が 徐々に増えてきて、2000年頃には星とほぼ拮抗する までになった。 この状況は世界的な観測研究の趨勢と併行したも のであるが、これは岡山天体物理観測所がその流れ を加味して新しい観測装置を開発・製作し、実際に 共同利用観測用に公開してきたことと密接に関連し ている。個々の観測装置の履歴は図3−1(P72) に記載しているので、参照されたい。 長期的な傾向で見ると、カセグレン分光器が90年 代に順調に稼働し、それを追ってOASISが利用でき るようになって、カセグレン焦点の使用と銀河の観 測は増えた。対象は微光天体へと移り、新月期の需 要が逼迫したのもこの頃である。また、OASISによ って星団や星雲等の観測に新しい展望が開けたこと もあり、90年代の後半はそれらの天体が多くなった。 そして、2000年にはHIDESが公開されるに及び、 恒星の観測が再び見直された。銀河や微光天体は岡 山天体物理観測所よりすばる望遠鏡へと流れ、役割 分担の上からも、188cm反射望遠鏡では恒星の高分 散分光に重点が移っていくことと思われる。 ところで、機器開発に関連して、望遠鏡時間の使 用も多少の変化が生じている。それは図5−4にも 見られるように、テスト時間の増加である。1990年 代にはOASISに引き続きHIDESが製作され、立ち上 げのフェイズではそれらの観測装置を望遠鏡に取り 付けて、実際の観測に近い状態でテストすることも 頻繁に行われるようになった。 岡山天体物理観測所における観測研究の成果は 第5章 観測テーマと対象 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ’70 ’75 ’80 ’90 ’95 2000 ’85 装置機能試験、他 (年) 太陽系天体 銀河・銀河系 星団・星雲 恒星 図5−4 観測テーマの推移