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1.序
まず初めに、岡山天体物理観測所(OAO)の開
所40周年を心からお祝いしたい。又、74インチ望遠
鏡を導入し、「天体物理観測所」とした先人・諸先
生方の意気込みとその識見を改めて思い起こし敬意
を表したい。OAOの役割は、日本全体の天文学者
に天体物理学的センスで観測天文学を遂行する場を
与え、世界を視野に入れた研究の土壌を培うことに
あったものとして記憶したい。40年間に、写真乾板
が固体撮像素子にとって代わられ、アナログからデ
ィジタルヘの変換時期であった。それに応じて、
種々の観測機器が次々に作られた。東京大学の付属
天文台から国立天文台となり共同利用機関として、
観測プログラム決定の面で、競争的原理がそれまで
以上に個々の研究者に好むと好まざるとにかかわら
ず意識されることとなった。このような74インチ鏡
周囲の状況の変化は、論文発表等の研究成果の公表
に否応なしに影響を与えた。これらを踏まえて、与
えられた課題、惑星状星雲と共生星関係のまとめを
試みたい。
2.惑星状星雲(Planetary Nebulae,PNe)
惑星状星雲研究の最大の課題は、中小質量星の進
化途上における質量放出機構と電離ガスが作る形態
の成因を明らかにすることである。輝線に関する物
理過程は、すでにほぼ確立していたから、PNeにつ
いては電子温度・電子密度・化学組成を明らかにす
るための基本情報として、輝線強度比を多数のサン
プルについて測定することが必要であった。私自身
のPNeについての観測上の初仕事は、36インチ鏡光
電スペクトルスキャンナー* を用いたものだった
(Tamura, 1970)。この装置では、オリオン星雲中心
部の構造を解析する仕事も行われた(Tamura,
1976)。尚、36インチ鏡では、山崎・橋本・神戸・
マラサンと共にNGC1501中心星の短周期変光を検
出するキャンペーン(Bond et a1. 1996)に加わっ
た。PNeについては、その特徴である膨張連度場の
解析が、昔も今も重要であることに変わりはない。
これについての観測は、74インチ鏡で行われた。院
第5章
惑星状星雲と共生星
田村眞一
東北大学理学研究科教授
編集者注:*本誌ではグレーティングスキャン測光器と称
している。