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岡山での測光連星(食連星)の観測の強みは
188cmによる分光観測と91cmによる色別測光観測
を同時に行うことが可能ということであった。食連
星は分光的に観測すればそのまま分光連星でもある
ので、同一連星の光度曲線と視線速度曲線の両方を
一度に獲得することができた。それらの解析から恒
星物理学における貴重な情報を直接求めることがで
きたので、岡山観測所が果たしたこの分野への貢献
は測り知れないものがあった。また岡山での食現象
の観測データから恒星の物理量を導く過程で、最も
面倒であった光度曲線解析は、フーリエ変換法(北
村1965,1967)により比較的易しく精度良く行われ
るようになり急激に進んだ。このフーリエ法は、そ
の後現れた大型コンピューターを利用してRocheモ
デルに基づく合成法(例:山崎1981)が出るまでは、
広く役立った。
1.長周期食連星の観測
主星が拡大大気を持ち、年オーダーの公転周期を
持つ食連星の多くは大気食現象を起こすので、食期
間中の観測から大気構造に関し他では得られない貴
重な情報が得られる。1962年以来、K型超巨星とB
型主系列星からなるZeta Aur(P=2.7年)、31 Cyg
(P=10.3年)、32 Cyg(P=3.1年)の観測は分光、測
光ともに北村(1967,1972,1973)、清川(1973)、
斉藤(1973,1976,1988)、川畑(1976,1988)等
によって精力的に行われ、K型超巨星の大気構造に
関する多くの新しい知見を導くことができた。また
M型超巨星とBe星から成るVV Cep(P=20.4年)で
は、1976−78年の食を斉藤(1980)が91cmで測光
し、中桐(1977)、中桐・山下(1979)が30cm鏡で
も測光し、周期116日の半規則的脈動の存在を認め
た。分光は川畑が行い、川畑とともに西城(1981)
が線輪郭を解析した。川畑・斉藤(1977)はさらに
禁制線視線速度をしらべた。もう一つの長周期連星
ε Aur(P=27.1年)はF型超巨星と“見えない伴星”
からなる謎めいた星とされているが、1982−84年の
食の観測で斉藤等(1987)は、食中のスペクトル変化
から伴星の吸収線を抽出することができ、その質量
〜2M'を求めた。同様の結果がMcDonald天文台グ
ループによってもその後発表され、F型主星はpost
AGB であることが一致して示唆されるに到った。
研 究
測光連星の観測
北村正利
東京大学東京天文台名誉教授