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1995年(平成7年)の天文月報第88巻第7号の天
球という項目に、私は「大望遠鏡の黎明」という題
目で岡山天体物理観測所の74吋(188センチ)反射
望遠鏡のできた由来経緯をかなり詳細に記したの
で、その重複は避けるが、この度、観測所開設40周
年の記念すべき時をむかえ、あらためて開設にいた
るまでの事態を簡単に述べ、参考までに私がたずさ
わった分光観測について記したい。
1953年、当時東京天文台長だった萩原雄祐先生は
日本学術会議の総会で、大型反射望遠鏡の設置の必
要なことを述べられ、それが決議として通った事か
ら、この事業は出発した。問題の望遠鏡のサイズ、
注文すべき光学会社の選択、設置する場所等が早速
取り扱わなければならないことであった。そのため
の委員会が設立された。
望遠鏡はイギリスのグラブ・パーソンズ会社、口
径は74吋の反射望遠鏡、設置場所は1956年の6月、
岡山県鴨方町の竹林寺山と決定した(図5−7)。
10年近い年月を経て、1960年の10月19日観測所の開
所式が挙行されたのであった。その時私はカナダの
西海岸ビクトリアのドミニオン天体物理天文台で奇
しくも殆ど同じ口径の72吋反射望遠鏡(グラブ・パ
ーソンズ製)で観測に従事していたが、大きな喜び
であった。12月の初め帰国した私はとるものもとり
あえず、観測所に駆けつけた。12月15日であった。
そしてテスト観測の仲間入りをしたのである。
最初の観測は12月16日。G3と呼んだプリズム分
光器による観測で、星は19 Psc, W Ori, UU Aur, 51
Gem で使用した写真乾板はネオパンで露出時間は
第5章
岡山天体物理観測所
に思いを寄せて
藤田良雄
東京大学名誉教授、学士院会員
図5−7 1954年6月、観測所適地選びの山歩き