第3章 72 観測装置 岡山天体物理観測所では共同利用観測に供するため、この40年間に種々の観測装置を開発・製作・ 運用してきた。特に、開所の頃は世界的に写真が検出器として広く使用され、写真乾板を組み込んだ 装置が一般的であった。しかしながら、近年は写真より感度の高い固体撮像素子が検出器として多用 されるようになり、今や写真は完全に駆逐された。 岡山天体物理観測所における観測は主に分光観測が行われ、この間分光器がその主流を占めてきた。 特に、188cm反射望遠鏡クーデ焦点では、鏡の切り替えにより多くの高分散分光器が稼働するようにな っていた。しかしながら、主に188cm反射望遠鏡のニュートン焦点で用いられた直接撮像カメラと、 91cm反射望遠鏡では測光器も多用された。また、共同利用装置以外は研究者自らP.I.となって製作し、 持ち込んできたものもある。このようにして、光学波長域のほとんどすべての観測的要請に応えてきた。 岡山天体物理観測所の最近の傾向としては、望遠鏡時間の効率化と、世界の第一線の観測にキャッ チアップすべき新しい観測装置の開発が盛んに行われている。このような観点で製作されたものは、 188cm反射望遠鏡のカセグレン分光器、近赤外分光撮像装置(OASIS)、高分散エシェル分光器 (HIDES)、91cm反射望遠鏡の偏光撮像装置(OOPS)である。 以下には、この40年間に稼働した主な観測装置の諸元を記述するが、188cm反射望遠鏡では総数約30 に上る。また、この間の変遷を図3−1に示す。 1960 1970 1980 1990 2000 撮像  乾板 広波長域分光器 光電測光器 カセグレン分光器 スペックル Glass 分光器 I. I. 分光器 Fourier 分光器 Z 分光器 グレーティングスキャン分光器 OOPS HBS 3 色同時測光器 HIDES 恒星マグネトグラフ Fabry-Perot Fiber 分光器 3D 分光器 Image Stabilizer 近赤外分光器 近赤外測光器 近赤外測光器 Échelle TICCD Échelle F4 Camera 乾板 F10 Camera 乾板 I. I. 45mm  90mm IDARSS RCA CCD HBS 星雲分光器 Quartz 分光器 撮像  RCA CCD Seeing Monitor PtSi OASIS 共同利用観測装置 P.I. もしくは持ち込み観測装置 図3−1 観測装置の変遷(名前の略号は本文中を参照されたい)
観測装置 73 188cm反射望遠鏡 ニュートン焦点 口径比F/4.9 焦点面で22.5″/mm 1)撮像カメラ 撮像測光、太陽系内天体位置観測などに多く使用 された。 乾板時代のガイドは観測台に乗ってアイピース を覗き、乾板枠を手で動かしていた(図3−2お よびP159“銀河の撮像観測”高瀬文志郎氏  参 照)。CCDカメラ時代になるとすべて遠隔操作で 行えるようになった。 2)星雲分光器 図3−3 撮像カメラ(RCA-CCD) 図3−2 撮像カメラ(写真時代) 図3−4 星雲分光器 図3−5 星雲分光器光学系 検出器 乾  板 サイズ 160×160mm (1°×1°) 総乾板数 1754 使用期間 1960−1986年 検出器 乾  板 サイズ 82×192mm (31'×45') 総乾板数 3011 使用期間 1960−1986年 検出器 RCA社CCD 画素数 1024×640 画素サイズ 15×15μm 撮像面積 15.4×9.6mm (5.'7×3.'6) 使用期間 1986−1997年 コリメーター 直  径 110mm 焦点距離 340mm 形  状 放物面鏡 グレーティング600本/mm カメラ F  値 F/0.65 直  径 100mm 方  式 シュミット 補正板径 100mm スリット 長  さ 20mm(8') 波長分解能 293Å/mm at 5000Å 検出器 8mmフィルム 像  面 4×11mm(横長スペクトル) 総フィルム数 47 使用期間 1962−1965年 開発・製作 岡山天体物理観測所、日本光学
第3章 74 188cm反射望遠鏡カセグレン焦点 口径比F/18  焦点面で6.09″/mm カセグレンQuartz-Prism分光器 カセグレンQuartz-Prism分光器 上記2台の分光器は開所時から恒星分類用標 準分光器として活躍してきた。 図3−7 Quartz-Prism分光器 図3−6 Quartz-Prism分光器光学系 コリメーター 直  径 70mm 焦点距離 1140mm 構  成 水晶と蛍石を用いた色消しレンズ 波長範囲 2900〜5000Å 水晶コルニュプリズム2個 F/3カメラ 波長範囲 2900〜5000Å スペクトル全長 37mm スペクトル全長 13mm 波長分解能 45Å/mm at 3500Å 検出器 乾  板 検出器サイズ 107×41mm 総乾板枚数 273 F/1.5カメラ 波長分解能 125Å/mm 検出器 乾  板 検出器サイズ 15×15mm 総乾板枚数 82 使用期間 1960−1972年 開発・製作 ヒルガーワッツ社(英国) コリメーター 直  径 70mm 焦点距離 1140mm 構  成 軽フリント製のプリズム2個 スペクトル全長 114mm F/3カメラ 波長範囲 3650〜8000Å スペクトル全長 35mm 波長分解能 57Å/mm at 4300Å 波長分解能 17Å/mm at 4300Å 検出器 乾  板 検出器サイズ 107×41mm 総乾板枚数 948 F/10カメラ 波長範囲 3650〜8000Å 検出器 乾  板 検出器サイズ 107×41mm 総乾板枚数 130 使用期間 1960−1979年 開発・製作 ヒルガーワッツ社(英国)
観測装置 75 3)I.I.(Image Intensifier)分光器 クーデ焦点に於いてI.I.を使用しての観測が 成功したのを受けて微光天体のスペクトル観測 を目的にI.I.専用の分光器が製作された。 40mmI.I.はクーデ焦点と兼用のため、その度 に高圧電源、本体、高圧分配器など一式を運ん だ。日本での本格的な銀河の分光はこのI.I.分 光器で始まった。初期の頃、ガイドはスリット 反射像、またはオフセット像を眼視で行い、後 にI.I.を眼視、その後IICCDカメラと変わって いった。スリットの天体に対する角度調整は分 光器全体を回転させることで可能である。 (P163、“銀河の分光観測事始め”若松謙一氏 参照) 図3−9 I.I. 分光器 図3−8 I.I. 分光器光学系 スリット長 15mm (1' 31") 方  式 850mm(合成) 焦点距離 70mm 主鏡径 22mm カソード S-20 副鏡径 20mm カセグレン穴径 カメラ 方  式 ソリッドシュミット方式 蛍光面 P-11 焦点距離 142.2mm 開口比 2.5 画  角 .. イメージチューブRCA C33063BP2 印加電圧 29.5 kV 分解能 60 Lp/mm トランスファーレンズF/1.2 検出器 乾  板 検出器サイズ 41×53mm 波長分解能 215Å/mm グレーティング300本/mm、1次光使用時 露出の目安 等  級 10等 露出時間 約3分 スリット幅 0.15mm 使用期間 1969−1989年 開発・製作 岡山天体物理観測所、日本光学 コリメーター 逆カセグレン方式 グレーティング600本/mm使用時 総乾板数 1772 乾板
第3章 76 4)広波長域分光器(Multi-Channel Spectrometer) 分光器、受光部、アナログアンプ系、フォトンカウンター系など岡山観測所の職員の手作り分光 器である。OKITAC-4300Cは同分光器のデータ取得のために岡山観測所に最初に導入された計算機で ある。星間磁場の検出、反射星雲の偏光観測、かにパルサーの光パルス・タイミングなど高時間分 解能の観測が多くおこなわれた。(P99、“岡山のInstrumentation”西村史朗氏  参照) 図3−11 広波長域分光器 図3−10 広波長域分光器光学系 オフセットガイド チョッパー ダイヤフラム ファブリレンズ 球面鏡 (焦点距離1m) グレーティング フィルター スロット デッカー ダイクロイック フィルター 光電管 光学系 テレセントリック・リトロー型 カメラ 焦点距離 1000mm 形  状 球面鏡 メーカー 浜松ホトニクス 大きさ 100×500mm ビーム径 56mm 線分散度 8Å/mm グレーティング600本/mm、2次光使用時 チョッパー周波数 30Hz スリット幅 最大400Å (2次光使用時) 波長分離板を変えることにより任意の波長が取得できる 検出器 光電子増倍管 R1437 (バイアルカリ) チャンネル数 10 天体と空からの2つのダイアフラムの後にチョッパーを置く 計数分解能 10MHz 検光子 ロションプリズム 偏  角 回転波長板 λ/2, λ/4 22.5°毎にステップ回転 使用計算機 OKITAC(ミニコン4300C) メモリー 4k words(最初) 入出力 紙テープから磁気テープに更新 のちにFACOM(スーパーミニコンS-3300)に更新 使用期間 1973-1990年 開発・製作 岡山天体物理観測所 偏光解析装置
観測装置 5)カセグレン分光器(通称:新カセ分光器) 前述のI.I.を装着した分光器はソリッ ド・シュミットタイプの光学系のため、UV 領域には吸収が大きく、広がった天体の観 測は不向きであった。より暗い天体をより 高い空間分解能、波長分解能、そしてリモ ート観測ができることを目標に開発した。 SNG:スペクトロネビュラグラフ 1990年より京都大学のグループと岡山観 測所が共同で3次元分光観測(Spectro Nebular Graph: SNG)モードを付け加えた (P107、“SNG物語”大谷浩氏  参照)。広が った天体に対し、スリットを分散方向に走 査しながらスペクトルを取得することで 天体の空間情報(2次元)と波長情報(1 次元)を取得することができる。この走査 は自動天体追尾の機能を利用して行ってい る。ガイドカメラ画像に含まれる明るい星 が、いつも指定した固定位置(ガイド点と 呼ぶ)からずれないようにモニターし、望 遠鏡にフィードバックをかけることで自動 追尾が実現する。このガイド点を露出終了のたびに僅かに移動させることで、天体にあてられるス リット位置も正確に動かすことができる。これらのデータ取得、走査を連続的に実現するのがSNG モードである。なお、取得したデータを整約するための専用解析パッケージ、SNGREDも開発され 一般に提供されている。 このSNGモードの開発の主体は京都大学の大学院生と観測所職員である。岡山観測所における共 同利用観測装置の製作に大学院生が参加したのは、このSNGモードの開発がはじめてであり、以後 の開発においては可視・近赤外を問わず装置開発においては大学院生が主たる戦力となってゆく。 尚、このSNGモードの開発に伴い、CCDカメラがフォトメトリクス社の科学用CCDを利用した製品 に交換された。それまでのT.I. CCDやPIAS 等と比較すると、応答の直線性に優れ、安定で、低ノイ ズであり、今日まで継続して利用されている。 77 図3−13 カセグレン分光器 図3−12 カセグレン分光器光学系 スリット長さ 最大50mm(5') コリメーター 方  式 逆ニュートン球面鏡方式 材  質 Zero-dur 視野平坦化レンズ 材質UBK7 焦点距離 1609mm 直  径 150mm ビーム径 90mm カメラの合焦はコリメーターで行う 画  角 カメラ シュミット型(光路折り曲げ式) 方  式 焦点距離270mm, 口径220mm 主  鏡 口径220mm 平面鏡 材質UBK7, 口径160mm, 厚さ10mm 補正板 材質UBK7 像面大きさ 分散方向 40mm 波長分解能 60Å/mm グレーティング600本/mm使用時 検出器 TICCD (1984-1991年) PIAS (1985-1988年) Photometrics CCD (1991年〜) 画素サイズ  20×20μm 画素数  516×516 冷  媒  液体窒素 使用計算機 パソコン  (NEC PC9801) 開発・製作 岡山天体物理観測所、三鷹光器、京都大学 スリット長方向 8.4mm
第3章 78 6)OASIS(Okayama Astrophysical System for Infrared imaging and Spectroscopy 国内初の本格的な近赤外分光・撮像装置である。使用している検出器は、HST のNICMOS (Near Infrared Camera and Multi-Object Spectrometer)搭載用に開発された2次元アレイの NICMOS3 (米国Rockwell社)である。当時、最も高感度で画素数の多い(256×256)検出器であ った。米国は2次元赤外線アレイに対して強い輸出規制をしていたが、このNICMOS3が商品とし て販売された頃に規制を緩和したため、我が国でも入手が可能となった。国立天文台は2つのアレ イを購入し、そのひとつを岡山天体物理観測所に割り当てたのがOASIS開発の発端である。 OASISの特徴は、1)反射型グレーティングによるロング・スリット分光と、20枚のフィルター による広、狭帯域撮像とを1台の観測装置で実現しており、2)その観測モードの切り替えが一 枚の平面鏡(切り替えミラー)の向きをかえることで容易に実現できる点である(図参照)。さら に、3)前置光学系部のコリメーターレンズのあとに、偏光観測装置やファブリーペロー分光器 用のエタロンを装着ができるように拡張機能を持たせた設計となっている。1)の特徴のため、 分野を問わず多くのユーザーによって利用されている。また、2)の機能を利用し、天候に応じ て撮像と分光を切り替えるなどして、ユーザーは極めて高い観測効率を実現している。 OASISは世間に対して華々しい登場を印象付けた。シューメーカー・レビー彗星の木星への衝突 の観測に成功したためである。最近では、オリオン星雲中のIRc2からの反射光スペクトルに発見さ れた吸収線の解析により、質量降着期における原始星の大きさが初めて明らかにされた。これら の研究はマスメディアを通じて報道され大きな話題となった。 OASISは観測所職員と3名の大学院生により製作がなされた(P114、“OASISの開発”奥村真一 郎氏  参照)。 図3−15 OASIS 図3−14 OASIS光学系 検出器制御系 ガイド部 制御系 アクイジション・ガイド部 OASIS本体 モーター 制御系 全体図 観測波長域 1−2.5μm 撮像視野 4'×4' フィルター J、H、Kの標準フィルターなど合計20枚を利用できる 分散素子 反射型グレーティング(3種類) 光学系 球面レンズ系1/4倍縮小光学系 波長分解能 150−1500 分光スリット長 4' スリット幅 2"4−4"8 検出器 NICMOS3 (米国Rockwell社) 光学系材質 レンズは溶融石英とフッ化カルシウムの2種類 画素サイズ 40×40μm 画素スケール 0."97/ピクセル 画素数 256×256 検出器駆動温度 80K 冷  却 ヘリウムガス冷凍機(GM式) 点源検出限界 撮像: 10σ, 120秒積分 16.5等(J), 16.0等(H), 15.1等(K') 使用期間 1994年〜 開発・製作 国立天文台、東京大学、総合研究大学院大学 分光: 10σ, 600秒積分 14.1等(J), 12.5等(H), 12.1等(K')
観測装置 79 188cm反射望遠鏡 クーデ焦点 口径比  F/29 3.80″/mm コリメーター(軸外放物面鏡) 焦点距離  2845mm 1)F/4分光器 2)エシェル分光器 3)F/10分光器 図3−17 エシェル分光器 図3−19 F/4、F/10分光器光学系 図3−16 F/4カメラ 5:補正板  6:主鏡  7,8:プレートホルダー 3:シャッター F/4, F/10の切り替えは写真:12のF/4のカメラが載っ ている台ごと移動する 図3−18 F/10焦点部 1:プレートホルダー (シャッターが開いてる) 8:シャッター開閉用ロッド 5 12 カメラ 方  式 軸外シュミット型 焦点距離 401mm 波  長 4000Å 縮小率 0.14 乾板ホルダーに像平坦化レンズが組み込まれている 波長分解能 10Å/mm 4500Åにてグレーティング1200本/mm、2次光使用時 スリット幅 0.22mm 検出器 乾  板 サイズ 82×27mm 露出の目安 A型6等星 使用乾板 103aO 露出時間 20分 グレーティング1200本/mm、2次光使用時 総乾板数 7337 使用期間 1960−1989年 開発・製作 ヒルガーワッツ社(英国) カメラ 方  式 軸外シュミット型 焦点距離 784mm 総乾板数 518 縮小率 0.28 乾板ホルダーに像平坦化レンズが組み込まれている 波長分解能 1.5Å/mm  4500Åにて 検出器 乾  板 使用期間 1963−1965年 サイズ 107×41mm, 160×41mm 露出の目安 A型6等星 露出時間 400分 1998年製作のHIDESとの効率の差に注目されたい 開発・製作 日本光学 カメラ 方  式 軸外シュミット型 焦点距離 1003mm 縮小率 0.35 波長分解能 4Å/mm 4500Åにてグレーティング1200本/mm、2次光使用時 検出装置は次頁以降を参照のこと 開発・製作 ヒルガーワッツ社(英国) 検出器 6 7 8 3 8 1
第3章 80 ■ F/10分光器で使用された検出装置 @乾  板 AI..Image Intensifier 40mm..(カセグレンI..と共用) 1967年カーネギー研究所からカスケード型映像増幅管一式の貸与を受け暗い天体の分光観測が 可能になった。初段の蛍光板の後ろにPhotocathode(S-20)を置き光電子に変換し、それを加速し て2段めの蛍光板を照射する。蛍光板の像を再びレンズによって乾板上につくる。電子レンズは永 久磁石と電場からなり入力側のPhotocathodeと最終段の蛍光板の間には29kVの電圧がかかってい る。したがって乾板上にできる像は波長にかかわらず蛍光面(P-11)の波長になる(図3−20参照)。 通常使用される乾板は103a-D(103a-Dの波長感度特性は図3−48を参照のこと)である。感度は高 感度の乾板に対して青領域で5倍、赤領域で約10倍である。ショットノイズも加速され、乾板上 では黒くなってしまう。長時間露出には不向きである。 90mm.. 図3−22 40mmI.I. 図3−21 90mm I.I. サイズ 41×107mm 乾板ホルダーに像平坦化レンズが組み込まれている 露出の目安 A型6等星 使用乳剤 103aO スリット幅 0.09mm 露出時間 約200分 グレーティング1200本/mm、 2次光使用時 使用期間 1960−1989年 総乾板数 4298 使用チューブ RCA製C33063 印加電圧 29.5kV カソード S-20 蛍光面 P-11 2段増幅 有効径 38mm 分解能 60Lp 検出器 乾  板 乾板サイズ 41×53mm 使用乳剤 103aD 使用期間 1967−1983年(1973年I.I.チューブ交換) 使用チューブ ITT製  F-4092 印加電圧 13kV カソード S-20 蛍光面 P-20 出口窓 ファイバー光学系を乾板に直接圧着 分解能 90Lp 検出器 乾  板 乾板サイズ 108×41mm 使用乾板 103aD 使用期間 1983−1989年 総乾板数 1750 (40mm、90mm共通) 図3−20 40mmI.I.のカソード(S- 20)と蛍光面(P-11)の波長特性 S-20 P-11 波長(Å)
観測装置 81 BIDARSSIntensified Diode Array Rapid Scan Spectrometer チャンネルプレートを使用したI.I.の出力蛍光面からファイバーを介してレチコンを密着させ る。写真乾板に変わってレチコンを使用したもの。岡山観測所で初めての1次元の本格的なアレー で、暗い天体を高分散、高時間分解能で観測できるシステムである。初代のITT社のI.I.はノイ ズが小さく長時間露出が可能であったため高いS/Nが得られた。1982年落雷のためにI.I.交換。 暗い星の高分散分光、明るい星の時間変化の他にも銀河、星雲の高分散観測もおこなうようにな った。銀河の高分散観測としてスターバースト銀河核の輝線輪郭の非対称性など電離ガス領域の 多様性が明らかにされた。 CCCDRCA クーデ分光の検出装置として約12年間活躍した。データは当初、IBM-ATからFACOM-S3300に送 られていたが1991年から構内LANが引かれ、本館のワークステーションに送られるようになった。 デュワーは遠隔操作で5軸動かせる台に載っている(図3−25)。CCD素子がRCA社(米国)製品 なので通称RCAと呼ばれた。 図3−25 5軸ステージの上に設置されたプリンストン社製CCDカメラヘッド 図3−24 IDARSS 図3−23 IDARSSの構造 マイクロチャンネルプレート 蛍光面 光ファイバー 光ファイバー フォトカソード 電子レンズ ヒートシンク (アルコールを循環) 光ダイオード・アレイ (レチコン) 素  子 I.I. +RETICON 画素サイズ 25×2.5mm 画素数 1024×1 撮像面積 25.6×2.5mm 同時観測波長域 104Å(グレーティング1200/mm、2次光使用時) 冷  媒 ドライアイス+エタノール 使用計算機 FACOM S-3300 メモリ  6MB、ディスク  727MB、出力  MT 使用期間 1979−1995年 画素サイズ 15×15μm 画素数 1024×640 撮像面積 15.4×9.6mm 同時観測波長域 4Å(グレーティング1200本/mm、 2次光使用時) カメラシステム プリンストン社(米国) 使用計算機 パソコン(IBM-AT) 冷  媒 液体窒素 使用期間 1986−1998年
第3章 82 4)HIDES(HIgh Dispersion Echelle Spectrograph 大型CCD時代にマッチした高分散エシェル分光器。設計・製作・調整を岡山観測所員(+大学院 生)の力でやり遂げた。開所以来使われてきたヒルガーワッツ製分光器(F/10カメラ)にくらべ、 最高比波長分解能3倍、同時観測波長域10倍以上。1997年春から製作を開始し、1999年春にファース トライトを迎え、2000年1月から共同利用を開始した。 HIDESの主な構成要素は、スリットと較正光源(従来の分光器と共用)、コリメータ鏡(従来の分 光器と共用)、主分散素子のエシェル格子、エシェル格子による回折光の次数の重なりを解くクロス ディスパーザー回折格子、結像カメラ光学系、CCDカメラ、そして制御系である。エシェル格子は 一定の姿勢に固定。CCDは2K×4K素子のCCDを、最終的には2個モザイクにして利用する(今のと ころは1個で使用)。クロスディスパーザーは青用(波長4500Å以下)と赤用(波長4500Å以上)の 2種類があり、瞬時に交換できる。赤用の場合一度に観測できる波長域はモザイクCCDに対して 2000Å強となる。また、結像光学系に口径200mmのレンズ系を採用したことで、光束のケラレを心 配することなく大型CCDの導入を図ることができた。 分光器の総合的な性能は比波長分解能100,000が十分達成可能である。実際にスリット幅0."38の時 に2K×4K素子のCCD上に記録されたスペクトルのどの部分においても比波長分解能100,000が実現さ れていることが確かめられた。さらにピクセルサイズの小さいCCDによるテストで、スリット幅を 狭めると160,000まで到達できることが明らかになっている。HIDESは188cm反射望遠鏡で比波長分 解能100,000を定常的に実現できる初めての分光器である。CCDの読み出し雑音は4.5電子相当が達成 されている。望遠鏡を含めたシステムの感度については、比波長分解能65,000の設定で12等級の天体 を1時間観測すると、4000−7000Åの波長域においてS/N=10以上が得られる。
観測装置 83 図3−26 HIDES:分散素子とカメラレンズ系 波長域 3600−10000Å 比波長分解能 R=65,000 スリット幅  0"76、200μmにたいして 検出器 CCD(13.5μm角ピクセル、2048×4096素子) 効  率 3%@ 5000Å 方  式 特定の名称なし コリメーター 軸外し放物面鏡 カメラ 球面レンズ系(5枚玉) 焦点距離  855mm、口径  200mm エシェルグレーティング 31.6本/mm(ブレーズ角  65°) クロスディスパーザー 250本/mm と400本/mm の2つを切り替え可能 スリットを広げると大気圏外のフラックスの3%が検出される 感  度 12等@ Vバンドの点源を分解能65,000で観測したとき、 1時間積分でS/N≦〜>10程度。望遠鏡の鏡面の反射率や シーイングにより、ファクター2で変化する 最高分解能 R=110,000 同時観測波長域 1150Å(グレーティング250本/mm使用時、1CCDあたり) 開発・製作 岡山天体物理観測所、京都大学
第3章 84 図3−27 2K×4KCCD(Marconi社(旧EEV社))で撮影された3950−4670Åの波長域の月(月面で反射された太陽光線) のスペクトル。比波長分解能(λ/Δλ)100,000。縦がエシェルの分散方向で下が短波長側、横がクロスディスパー ザーの分散方向で右が短波長側。青用クロスディスパーザーを使用。スリット長7."9。エシェルの回折次数で144次 (短波長側)の途中から121次(長波長側)の一端まで見えている。この波長域のエシェル格子によるフリースペクトラ ルレンジはCCDの縦の長さの半分以下に収まっているので、同一波長の吸収線が隣合う次数のスペクトルの違う場所に 同時に観察される。つまり、左右方向に隣り合っている2つのスペクトルの帯を見比べると、右側の帯の中央より上側に 見えている吸収線の並びが、左側の帯の中央より下側に再度現れている。
観測装置 85 ■ HIDESの要素技術 ヨウ素ガス ヨウ素ガスセル装置は、天体の視線速度変化を精密に測定するための装置であり、太陽 セル装置 系外惑星や微少恒星震動の検出など、数m/s以下の精度を必要とする観測に用いられる。 ヨウ素ガスは可視域に安定した多数の吸収線を示すが、これを封入したセルを通して 天体を分光し、天体のスペクトルにヨウ素の吸収線を重ね合わせ、装置に起因する見 かけ上の波長のずれなどを高度に補正することによって、極めて高い視線速度測定精 度を実現することができる。HIDESではヨウ素ガスセル装置を2000年7月に導入し、現 在試験観測を続けているが、太陽型星では既に5m/s程度の相対速度が達成されている。 これは世界のトップレベルに匹適するものである。 イメージ クーデ焦点では、カセグレン焦点などと異なり、望遠鏡の姿勢で天体像が回転する。 ローテーター つまり、天体の位置および観測時間によって天体像が回転し、さらに同一天体を追尾 中でも時間の経過にしたがって像の回転が生じることになる。このことから、分光器 を回転させる機構を持たないクーデ焦点では、空間的に広がりを持つ天体に対して任 意の方向にスリットをあてて観測することが困難であった。イメージローテーターは、 三枚の鏡で構成される反射光学系をスリット前に挿入し、それを回転させることによ って、上記の問題点を克服する装置である。2001年に導入された写真の装置は、±2.6 分角の精度で角度追尾を実現し、計算機上からの完全なリモートコントロールによっ て、光路への挿入・離脱等もできるようにされている。 図3−28 HIDESのスリット前に装着されたヨウ素ガスセル装置 (中央の黒い小さい箱)をクーデ室西側からみたところ イメージローテーターと同じ架台に載り切り替えられる 図3−29 ヨウ素ガスセルを封入した真空容器。ほのかにヨウ素 の色がついている。 図3−31 スリット前に装着されたイメージローテーター 図3−30 惑星状星雲(エスキモー星雲、NGC2392)のHαの輝線ス ペクトル。イメージローテーターを利用してスリットを位置 角0°(右)と90°(左)にあてて観測した。
第3章 86 写真時代のクーデ分光観測 今から20年前までは、天体観測における効率のよい2次元検出器とは写真であった。写真には、現像という 化学処理を施すことで、露光量に対応した黒みがあらわれる性質がある。露光量がふえると、対応する黒み (写真濃度)も増える。この性質により、露光量の多少、つまり天体の明るさが判断できる。しかし、写真に は面白い性質があって、露光量がある値より少ない場合は黒みが殆ど変化しないし、逆に露光量がある値より 多い場合は飽和して黒みが増えない。露光量がある範囲に収められた場合のみ、露光量に応じて黒みが変化す る。要するに写真にはダイナミックレンジが存在するのである。 恒星の分光観測の場合、連続光レベルの写真濃度がダイナミックレンジの上端付近になるように露出時間を 調整すると高いS/N のデータを取得できる。例えば、A型の6等星をクーデ分光器で観測する場合、適正露 出時間は200分である。快晴の場合は200分の露出で望みどおりのデー タが得られるが、観測中シーイングが変化したり、天候に変化がある と写真乾板上の照度が変化するため、露出時間を調整することになる。 一般には露出終了時刻を延長することになるが、この延長時間の判断 を誤ると、露出オーバーとなって測定に堪えない乾板となり、3時間を 越えるガイドの苦労が水の泡となってしまう。 そこで岡山天体物理観測所では、分光器に導かれた光量を知るため の光量モニタを自前で製作し利用した。スリットの直後におかれた平 板ガラスで約3%の光をはねて、これを光電管で測定するものである。 この光量モニタにより、効率よく安定したスペクトル画像が得られる ようになった。 さて、石田語録に「望遠鏡のガイドはいつも“押し麦”のように」 とある。上記の例では、観測者はクーデ室の暗闇の中で200分あまりの 長時間にわたりファインダーを覗きつづけ、ハンドセットを利用しな がらスリットから星を逃がさないように"押し麦"状態を続けたもので ある。今から20年以上前のクーデ室の観測風景である。 :“押し麦”とは戦後の食卓にのぼった麦飯の材料で、蒸した大麦を圧 搾・乾燥したものである。小判状につぶれた麦の真中を黒条(通称ふん どし)がとおっており、その様子がスリット上の星のように見える。 1960年代のクーデ室前光学系 観測者は手前の椅子に座って画面中 央のファインダーを覗き暗闇の中で 何時間もガイドしていた。右壁面に 露出計、レコーダーが見える。
観測装置 87 図3−32 Cdフーリエ分光器(1) 188cm反射望遠鏡P.I. 装置 主な装置とP. I.(敬称略)を示す。 Cassはカセグレン焦点,Cdはクーデ焦点, Nはニュートン焦点を意味する。 1)Cdフーリエ分光器 1976−1996年 田中  済 波長最高分解能 0.03cm−1 観測波長域 2000−7000cm−1 検 出 器 InSb 冷    媒 液体窒素 使用計算機 パソコンよりFACOM-S3300 ヘグレードアップ 2)Cdファブリ・ペロー分光器1984−1995年 安藤裕康 波長分解能 0.05Å(R〜105 観測波長域 4500−5500Å フリースペクトル域 2.5A(at5500Å) 検 出 器 光電子増倍管 冷    煤 ドライアイス 使用計算機 FACOM-S3300 3)Cass IR近赤外測光器1970−1972年 奥田治之 4)Cd恒星マグネトグラフ1983−1984年 成相恭二 1988年 5)Cass近赤外測光器 1984年 佐藤修二 6)Cassスペックルカメラ1985−1995年 馬場直志 7)Cass近赤外測光器 1985年 田中  済 8)Cass近赤外分光器 1985−1987年 野口邦男 9)Cass近赤外分光器 1985−1987年 松本敏雄 10)Cass近赤外分光器 1961−1987年 舞原俊憲 11)Cd  Échelle CCD 1988−1990年 川上  肇 12)Nシーイングモニター1991−1992年 西原英治 13)N Pt Si近赤外カメラ1991−1992年 上野宗孝 14)Cassイメージスタビライザー1991−1992年 早野  裕 15)N多天体ファイバー分光器1992−1999年 能丸淳一 三戸洋之 16)Cass3次元分光器 1996〜 大谷  浩 17)Cass偏光分光測光器(HBS)1999〜 川端弘治 図3−33 Cdファブリー・ペロー分光器(2) 図3−35 Cass近赤外分光器(10) 図3−34 Cassスペックルカメラ(6)
第3章 88 91cm反射望遠鏡装置 共同利用装置 1)光電測光器(1号) 1961−1966年 2)光電測光器(2号) 1966−1979年 3)光電測光器(3号) 1979−1992年 4)グレーティングスキャン測光器(1号) 1962−1699年 5)グレーティングスキャン測光器(2号) 1970−1980年 6)3色同時測光器  1970−1990年 図3−36 1号測光器と旧望遠鏡コントロー ルデスク。測光器の出力チャート レコーダーが見える(1961年) 図3−38 測光データはディジタルボルトメーターを使用し紙テ ープに鑽孔された。測光器の制御も遠隔操作になった。 (1966年) 図3−39 3号測光器と望遠鏡新制御系(1979年) 図3−37 グレーティングスキャン測光器 (2号機) 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B) 冷  却 ペルチェ素子冷却(水冷) 出  力 アナログ記録計 使用期間 1961−1966年 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B) 冷  却 ドライアイス冷却 出  力 アナログ記録計 1968〜ディジタル出力(紙テープ鑽孔) 使用期間 1966−1979年 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B、 浜松ホトニクスR943-02) 冷  却 ドライアイス冷却 出  力 ディジタル出力(MT記録) 使用計算機 OKITAC 5010V 限界等級 約16等(10秒積分、DC出力) 使用フィルタージョンソン3色(U、B、V)他7色 使用期間 1979−1992年 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B) 冷  却 ペルチェ素子冷却(水冷) 出  力 アナログ記録計 使用期間 1962−1966年 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B) 冷  却 ドライアイス冷却 出  力 アナログ記録計 使用期間 1970−1980年 受光素子 光電子増倍管(EMI 6256B) 出  力 アナログ記録計 使用フィルター フィルター回転速度 ジョンソン3色(U、B、V) 30Hz 使用期間 1970−1990年 開発・製作 日本光学 開発・製作 岡山天体物理観測所 開発・製作 岡山天体物理観測所 開発・製作 岡山天体物理観測所、日本光学 開発・製作 岡山天体物理観測所、三鷹光器 開発・製作 岡山天体物理観測所
観測装置 89 7)プリズム分光器(Z分光器) レンズは、三鷹構内にある口径65cm望遠鏡用の分 光器(Zeiss社製品)部品を再利用したものである。 そこで、Zeiss 社にちなんでZ分光器と名づけられた。 1971年から約5年の歳月を費やして、MK分類の 標準星と各種特異星の分光観測を行い、約1000枚の スペクトル乾板を取得した。その中から厳選された スペクトルが“An Atlas of Representative Stellar Spectra”として出版されている。このアトラスは、 我が国から出版された最初の恒星スペクトル・アト ラスである。収録されているスペクトルの範囲が広 く、美しい仕上がりのため、今日にいたるまで多く の研究者によって研究や教育に利用されている。そ の他に、Be星の時間変化や、星間吸収線(λ4430 Å)のサーベイなどに利用されている。近年ではア トラスで紹介された星のスペクトル写真がカラーフ ィルムで取得され、CD-ROMを媒体とした天文教 材「宇宙スペクトル博物館」に資料として収録され た。 1982  Sep. 1984  Aug. 3 16 1985  Sep. 3 1986  Oct.   15 1987  Oct. 2 1987  Dec. 4 1988  Aug.  30 1989  Aug.  27 1989  Dec.  10 1990  Aug.    9 1991  Nov. 5 1992  July.  22 1987  Apr.   19 図3−40 Z分光器で撮影したスペクトル(PU Vulの1982年から1992年にかけてのスペクトルの変化) 図3−41 Z分光器光学系 図3−42 Z分光器 分散素子 プリズム 分散素子材質 フリントガラス 分散素子屈折率 1.64 (Hγ) 開発・製作 岡山天体物理観測所 分散度 73Å/mm (Hγ) カメラ口径比 4 観測波長範囲 3600−7000Å 典型的なスリット幅 0.06mm スリット長さ 3.0mm 検出器 乾  板 検出器サイズ 107×41mm 使用期間 1970−1990年 総乾板数 2300 1960年代中ごろまで、91cm望遠鏡では主に光 電測光が行われていた。光電測光は大気が安定し ていないと精度の高い結果が得られない。そこで、 天候変化の影響を受けにくい分光器の製作が提唱 され、Z分光器が誕生した。構成部品のうち、ガ イド用ファインダー、スリット部、およびカメラ 広視野 ファインダー ガイド用 ファインダー 乾板 カメラレンズ
第3章 90 8)偏光撮像分析装置(OOPS : Okayama Optical Polarimetry and Spectroscopy system at OAO) オートガイダ用カメラ:IICCD カメラ OOPSは91cm望遠鏡用に製作された偏光撮像分光装置である。 光学系はコリメータレンズ(f=135mm)と、カメラレンズ(f= 50mm)から構成され、コリメータレンズがつくる平行ビーム中にさまざまな光学部品を挿入するこ とで、偏光撮像観測、グリズムによる低分散分光観測、偏光分光観測、そして直接撮像観測が実現 できる。ロション・プリズムと半波長板を組み合わせることで、CCD上には常光像と異常光像が結像 する。このような2光路式偏光子を用いた観測では、観測中に天候が変化しても画像間の相対補正が 可能であるため、日本のように天候変化のある土地に最適化したつくりとなっている。OOPSを構成 する機械要素や光学要素はモジュール化されており、装置の維持が容易になるよう設計されている。 OOPSの制御系は4つの観測モードを短時間に切り替えられ、しかも91cm反射望遠鏡やオートガイ ダとも連携した半自動化された観測が可能になっている。なお、91cm反射望遠鏡の制御系やオートガ イダはOOPS製作グループにより更新された。OOPSはすばる望遠鏡用の観測装置FOCASのプロトタ イプとも位置付けられ、分散統合型ソフトウエアの経験を積む上で大いに役立った。 装置の設計・製作には、観測所職員があたった。 9)P.I.装置 近赤外測光器    1968年        長谷川博一、奥田治之 近赤外測光器    1969−1973年  奥田治之 偏光分光測光器(HBS)1999〜  川端弘治 偏光分光測光器(HBS)は、可視波長域において、天体の直 線偏光および強度の低分散スペクトルを取得する装置である。 波長分解能35-150Åで3600-9000Åの波長域を一度にカバーし、 広い波長域にわたる連続光の偏光と、強い輝線や吸収線部分の 偏光を、同時にかつ分離して捉えることができるのが特徴であ る。偏光度測定精度は0.1%以下を達成している。主に前主系 列星やB型輝線星、新星、共生星、小惑星の偏光、星間偏光の 測定に用いられ、これらの偏光の原因となる、ダスト・電子と いった光散乱体の特性や分布についての研究が広く行なわれて いる。1999年度まで堂平観測所で共同利用装置として稼働した 後、現在は主に岡山天体物理観測所91cm望遠鏡にて利用され ている。また、課題に応じて188cm望遠鏡へ取り付けての観測 も実施されている。 OOPS F/13 CCD (TC-215) 焦点面 (21mm x 16mm) コリメータレンズ (135mm F/2.8) フィルター シャッター 半波長板 ロション プリズム グリズム カメラレンズ (50mm F/1.2) デュワー窓 (f 10.2) 20mm θ=4.4 図3−44 91cm反射望遠鏡に装着されたHBS 図3−43 OOPS光学系図 検出器 CCD TC-215 (T.I.社製) 画素数 1000×1018 画素サイズ 12×12μm 画素スケール 0"56/ピクセル 冷  媒 液体窒素 観測波長範囲 4000−8000Å 偏光素子 ロションプリズム(分散角7°)、アクロマティック半波長板 フィルター U、B、V、R、Iバンド(必要に応じて交換可能) 分散素子 グリズム(材質BK7、400本/mm、ブレーズ波長5500Å) オートガイダー用カメラ IICCDカメラ 使用期間 1992−2000年 開発・製作 岡山天体物理観測所
観測装置 91 65cmクーデ型太陽望遠鏡観測装置 1)高分散分光器 2)エシェル分光器 3)マグネトグラフ 図3−46 マグネトグラフ前光学系 図3−45 分光器(右奥にエシェル分光器の主鏡(1m)が見える) 図3−47 黒点周辺の磁力線の様子が描かれている。右の太陽像の四角で囲まれている部分。 赤がN極。青がS極 スリット長 最大50mm コリメーター (カメラ部と共用) 口  径 430mm 焦点距離 10m 分散度 0.36Å/mm 4000Åにてグレーティング1200本/mm, 2次光使用時 受光面積 50×200mm 検出器 乾板 サイズ 80×220mm, 20×200mm フィルム 35mm長尺 分散度 0.30Å/mm (4000Åにて) コリメーター 口  径 0.15m 焦点距離 5m 受光面積 240×440mm カメラ 口  径 1m 焦点距離 4m 分散系 垂直分散 透過グレーティング83本/mm、エシェルグレーティング(反射) 73本/mm 検出器 24cm幅のロール航空フィルム 観測波長 Fe I λ5250Åほか 1/4波長板 5250Å用、回転速度  40Hz 分光器 高分散分光器を使用 受光部 プリズムスリット幅  150μm、マスクスリット幅  500μm 5250Åの中心より27-80mÅを受光 検出器 光電子増倍管(EMI 6256B)  6本 使用計算機 MELCOM 70/60 メモリ  3MB、ディスク  64MB、出力  磁気テープ P119“岡山の太陽観測”牧田貢氏  参照