第2章 58 188cm反射望遠鏡 国内最大の光学(赤外線)望遠鏡 グラブ・パーソンズ(イギリス) 1960年 国内最大口径の光学赤外線望遠 鏡。口径74インチ(=188cm)であ ることから、通称74(ナナヨン)と 呼ばれている。 完成時には世界第7位、東洋一の 望遠鏡であった。製作には5年間か かり、建物を含めた総工費は約3億 円を要した。 グラブ・パーソンズ社による同じ 口径の望遠鏡はカナダ、オーストラ リア、フランス、南アフリカおよび エジプトにもある。 主鏡のF比は4.9であり、鏡筒は 長い8角トラスからなっている。望 遠鏡架台はイギリス式の赤道儀で、 総重量50トンある。望遠鏡の指向精 度は新しい制御系の導入により、± 15″前後に改善されている。 この望遠鏡は副鏡を交換すること により、観測目的により三つの焦点 を使い分けることができる。焦点に おけるスケールを月の大きさで表す と、ニュートン焦点では8.3cm、カ セグレン焦点では31cm、クーデ焦 点では49cmの直径となる。 建設当時の188cm反射望遠鏡の世 間に与えたインパクトの大きさは想 像に難くない。分割された望遠鏡が 玉島港から竹林寺の山に輸送された のは大きく報道され、それを見た少 年が現在天文学者として活躍してい る。 望遠鏡 クラシカルカセグレン 主鏡 有効径[m] 1.88 材質 パイレックス(ピルキントン社) 形状 放物面 厚み[m] 0.27 重量[t] 1.7 副鏡 種類 ニュートン カセグレン クーデ 材質 溶融水晶 溶融水晶 溶融水晶 外径[m] 0.533 0.501 0.501 重量[kg] 41 34 34 形状 平面 双曲面 双曲面 曲率半径[m]  --- 5.934 5.171 焦点 種類 ニュートン カセグレン クーデ 焦点距離[m]  9.15 33.85 54.29 口径比 4.9 18 29 焦点面 スケール [″/mm] 22.5 6.09 3.80 ハルトマン定数 〜0.23 ■ 光 学 系 ■ 機 械 系 マウント 方式 イギリス式赤道儀 重量[t] 50 鏡筒 センターピース+8角トラス 長さ[m] 9 駆動速度 モード クイック スロー1 スロー2 速度[/min] 40° 18′ 5〜90″ 駆動モーター DCサーボ ACインダ クション DCサーボ 赤緯微動 可動範囲 5°30′ セルフセンター機構付き スロー1スピードで駆動 表示 (読取) エンコーダー アブソリュート インクリ メンタル 赤経(RA) 0.0625秒 (0."9375″) 0. "1 赤緯(Dec.) 1."5 0. "1 指向精度 ±15″ 焦点距離[m]  9.15(F/4.9)
望遠鏡とドーム 59 ドーム ニュートン焦点 北ピアー バランスウェイト 昇降床 地面 通風口 通風口 中央機械室 真空蒸着室 廊下 待機 測定 HIDES クーデ焦点 南ピアー カセグレン分光器 OASIS カセグレン焦点 主鏡 図2−1  188cm反射望遠鏡ドーム概略図
第2章 60
望遠鏡とドーム 61 188cm反射望遠鏡の制御系 188cm望遠鏡の制御系は設置当初はアナログの計器盤と駆動ボタン等を備えた制御盤(コントロール デスク)からなり、位置を読みとりながら駆動をする形式であった(図2−3上)。また、露出中のガ イド操作も、観測者がアイピースを覗きながらハンドセットで行い、天体の光は写真乾板上に捉えた。 現代の望遠鏡は高速・大容量の計算機により制御し、高感度検出器で天体の光をとらえることがで きるようになった。188cm望遠鏡制御系は先端の観測を可能とするよう改修が施されてきた。1988年に はパソコンのネットワークによる制御へと改修を行った(図2−3中)。現在さらに高速・高精度の制 御系へと改修作業を行っている(図2−3下)。 観測操作からデータ取得まで効率的に進められるように、望遠鏡をインテリジェントなシステムと して統括的に制御できるように、また、望遠鏡制御を遠隔自動制御できるように、望遠鏡ドームと本 館の計算機の間はネットワーク(LAN)で結ばれている。 図2−3 望遠鏡操作の変遷 図上:旧制御系のコントロールデスク(1960年) 図中:1988年改修後のコンソールディスプレイ(1988年) 図下:2000年改修後のグラフィカルユーザーインターフェイス (2000年)