66 岡山天体物理観測所では観測環境整備の一環とし て環境モニター(図2−8参照)を設置している。 主な目的は観測中に即時に環境を把握すること、そ の情報を蓄積することで後の解析に役立てることで ある。国内の観測所は観測において気象の影響を受 けやすい。観測効率の向上や望遠鏡など観測機器の 保護の観点から環境モニターは必須である。また情 報を定量化することによって、その評価を客観的な ものにすることができ、また、電子化により蓄積が 容易になる。 情報を提供する手段としては、WWW (World Wide Web) を利用している。そのため、LANが整 備されている当観測所内では場所を選ぶことなく最 新の情報を得ることができる。情報は公開と同時に データベースとなり、観測機器による観測データと ともに蓄積されている。 環境モニターは、気象状況を把握する気象モニタ ー、大気透明度を把握するスカイモニター、188cm 反射望遠鏡ドーム内のシーイングを測定するシーイ ングモニターからなる。 第2章 環境モニター 気象モニター ドームシーイングモニター スカイモニター 図2−8 環境モニター概略図 ナチュラルシーイングモニター サイトの評価を目的に開発されたシーイングモニ ター。岡山観測所のナチュラルシーイング測定や 太陽観測施設のサイト調査に利用され、さらにマ ウナケアを始めとしたサイト調査への協力が要請 されている。
67 気象モニター(1994年) 気象モニターは、気温、気圧、湿度、風速、風向、 降水量のデータを自動で取得しWWWで公開(図 2−9参照)、同時にデータベース化するシステム である。環境モニターの根幹となるこれらのデータ により観測の可否、天気傾向の把握が行われる。よ り正確な天候判断のために、2001年に気象台の仕様 に準拠した本格的屋外気象センサーを導入し、信頼 性の高いシステムが実現された。 スカイモニター(1999年) 大気透明度を把握するための全天カメラ(図2− 10参照)で、魚眼レンズとCCDカメラから構成さ れる。可視波長域において捕らえられた画像は気象 モニターと同様WWWにて公開される。観測中屋外 へ出て暗闇に眼をなじませる手間がはぶけるため、 当観測所のユーザーに愛用されている。このように 可視カメラ画像は天候の様子を視覚で認識ができる 点が優れているが、都市光の時間変化や月光の影響 を受け雲量の定量的把握が困難である。そこで2001 年には非球面金属鏡と中間赤外線カメラからなる新 システムを開発し、雲からの赤外輻射を直接捉える ことで、雲量や光学的厚さの定量把握を行い観測を 自動化することを目標としている。 シーイングモニター(2000年) 観測効率へ影響をおよぼすシーイング、特にドー ムシーイングについてはさらなる改善が期待でき る。当観測所では、すばる望遠鏡の予備研究の段階 から実験的に温度ゆらぎやシーイングの測定が行わ れてきた。しかしながらシーイングの向上に観測所 として取り組み始めたのは1998年のドーム内の熱源 探査からである。その後、2000年にはドーム内多点 温度モニター設置により熱源、熱の流入経路が判明 した。今後はドーム内の熱制御が課題となるが、そ の効果を定量的に評価するため、ドームシーイング を測定するシーイングモニターが開発された。この シーイングモニターは188cm望遠鏡に同架して測定 を行うが、DIMM(Differential Image Motion Monitor)と呼ばれる方式のため、望遠鏡の振動の 影響を受けない測定が可能である。 望遠鏡とドーム 図2−10 スカイモニターによる全天画像(左:快晴、右:曇天) 図2−9 Java Appletによる気象データのブラウザ。所内数点 の気象データをプロットしており、最上列左から気温、湿度、 中央列左から風速、風向、最下列左から雨量、気圧を示している。