51 観測テーマと用いられる観測装置は時代とともに 変遷している。下図(図1−30参照)は観測所開所 以来の188cm反射望遠鏡で行われた観測の焦点別の 使用頻度である。 まず全体的な実施件数の推移を見ると、1960年か ら70年代にかけては漸増しながらも年間約60件程 度、すなわち一件あたり5夜程度で割り付けられて いた。しかし、80年代に入ると80件程度まで増加し、 観測日数が減少したため、いわゆる「共倒れ」現象 が生じた。そこで、改組(1988)を契機としてスク リーニング制を導入して割付を整理し、日程を確保 したが、このような推移が顕著に見られる。 また、焦点別の推移で特徴的なことは a 初期の頃はクーデ焦点が多用された、 s  80年代以降はニュートン焦点が減少した、 とういうことが見られる。 これは、初期は恒星の分光観測、すなわち明るい 星の大気構造や化学組成の研究が主であったが、次 第に銀河や微光天体に対象が移っ たこと、また、空が明るくなり、 撮像観測が減少したこと等の結果 と解釈できる。 80年代の途中で行われた写真か らCCDへの検出器の交代の影響 はこの図からも読みとれる。例え ば、ニュートン撮像はCCDによ り感度が上がり補正がしやすくな ったことが一時的に利用を増やし た。また、カセグレン分光では T.T.+写真にCCDが取って替わ り、空の明るさに反して、より微 光の天体を狙う観測が増えた。他 方では、クーデ分光ではCCDの 小フォーマットがカバーする波長 域の狭さとなり、天体や観測テー マに大きな影響を与えた。なお、 これはHIDESによって解消され ている。 近年では、観測装置の立ち上げ やテストに、また観測所現地に勤 務する研究者用に利用される「観 測所時間」を設け(図1−31参照)、 機器開発や現地における研究支援 体制の充実を図っている。 観測所と共同利用 観測実施件数の変遷 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ’63 ’65 ’67 ’69 ’71 ’73 ’75 ’77 ’79 ’81 ’83 ’85 ’87 ’89 ’91 ’93 ’95 ’97 ’99 ニュートン カセグレン クーデ (年) 90 0 ’88   ’89   ’90   ’91   ’92   ’93   ’94 ’97 ’95   ’96 ’98   ’99 10 20 30 40 50 60 70 80 共同利用 観測所時間 (年) 図1−30 焦点別共同利用観測件数の推移 図1−31 観測所時間件数の増加